様々な謎と共に多くの伏線がスマートに散りばめられたダークファンタジー「黒執事」。その中でも特に注目されている謎を考察していきます。
※2017年12月31日更新
記事の目次
衝撃のダークファンタジー『黒執事』とは
2006年から「月刊Gファンタジー」で連載中の、枢やな原作の人気漫画『黒執事』。水嶋ヒロを主人公に迎えた実写化や、舞台化もされた人気作品です。2008年にはアニメ1期、2010年にはアニメ2期、2017年1月には、初の劇場版となる『黒執事Book of Atlantic』も公開されました。
シエル双子説は本当だった!?
これまでネット上でもシエル双子説に関する考察がされていましたが、2017年6月発売の「月間Gファンタジー」で、本物のシエルと思われる人物の登場に、シエルが双子だったということが明かされました。ここでは、本物のシエルをシエルと、坊ちゃんは坊ちゃんと呼ばせていただきます。
『黒執事』には、様々な伏線が張られており、しかも一見わからないようなものが多く存在しています。なかでも一番気になっていたシエル双子説があかされたことで、物語が大きく動く予感と、悲しいことに終盤に近づいているといった状況になっていますよね。また、今まで双子説の伏線となっていたのは、髪の毛の分け目や多くの回想シーン、周りの人物たちの意味深なセリフなどがありました。この先、これらの伏線が回収されていくのは、楽しみでもあり寂しくもありますが、シエルは本当に本物のシエルと考えていいのでしょうか…。
シエル双子説が示唆されていたもの
これまで坊ちゃんの髪の毛の分け目の違いや、焼印が押されている位置の違い、登場人物らの意味深なセリフなど、巧妙に張られた伏線から、シエル双子説が常々浮上していましたが、ついにその決定的瞬間が26巻で明らかになりました。
「真実ですよ 彼こそがシエル・ファントムハイヴ伯爵です」
『黒執事』26巻130話から引用
”ただいま”と坊ちゃんの前に現れたのは、もうひとりのシエルでした。”ふたりの伯爵、ふたりのシエル、ひとりの嘘つき”となる展開で、坊ちゃんがシエルになりすましてた”嘘つき”だったことは、タナカの言葉が証明しています。
アンダーテイカーに隠された謎
アンダーテイカーとファントムハイヴ家の繋がり
アンダーテイカーといえば死神の離脱組ですが、死神というのはもと自殺した人間であり、アンダーテイカーももちろんそうであると考えています。豪華客船編でアンダーテイカーが、メモリアルジュエリーを坊ちゃんに預けるといっていましたが、そのジュエリーには「13july 1866 cloudia・P とalex」とかかれています。
cloudiaはクローディア、PというのはPhantomhive(ファントムハイヴ)の略であると思われます。また、alex(アレックス)というのは、アンダーテイカーが人間だったときの名前だと考えています。クラウディアが何らかの事情で亡くなり、アレックスが後を追って自殺したとか。
アンダーテイカーがアレックスという男性で、もしクローディアと結婚してたとすれば、アレックスもファントムハイヴ家の一員ということになります。ということは、ヴィンセントはアレックスの息子か孫か・・・。そうするとアンダーテイカーがヴィンセントの写真を見て、涙を流すシーンも不自然ではなくなるように思えます。しかし、坊ちゃんが生まれたのは1875年なので物語の
舞台は1887年頃。アンダーテイカーは死神をやめてから半世紀たっているというので、クローディアと出会って死神をやめたのだとすれば、1825年頃になります。となると、クローディアの後を追って自殺したというのでは年数が合いません。死神なのに人間に恋をしてしまった・・・もしくは、お互いに恋焦がれたということもあるのかもしれませんね。
ピザール・ドールを作る目的とは?
アンダーテイカーは豪華客船編で死者蘇生に大きく関わっており、寄宿学校編でも同じことを行っています。しかしアンダーテイカーは、なぜそこまでして死者蘇生にこだわっているのでしょうか。いつもアンダーテイカーが坊ちゃんに言う「魂はひとつしかない」という言葉は何度も出てきましたが、深い意味が込められた重要なキーワードであることは間違いないでしょう。亡くなってしまえば、その時点でシネマティックレコードも終わってしまうので、その人生もそこから先の記録が生まれません。
アンダーテイカーの死者蘇生への興味は、そのシネマティックレコードに、作られた記憶を繋ぎ合わせたらどうなるのかということ。それがピザール・ドールへと進んでいくのですが、完璧なピザール・ドールにするには”素材”が揃えば作れると、18巻84話のアガレス先生でわかりますね。
ソーマ襲撃事件とシエルの関わり
アグニ死す!
127話でソーマが襲撃された件。アグニは、執事としてソーマを閉じ込めた部屋のドアを死守したまま、そして立ったまま背中に何本ものナイフを突き刺されて亡くなりました。
犯人は尋常ではないスピードで、次々と彼らに襲い掛かりました。アグニの力は”普通の人間”が束になっても敵わない、セバスチャンのお墨付きであるにも関わらず、殺害されたことには驚きを隠せません。また、駆けつけた坊ちゃんのソーマが殴りかかっていたことから、ソーマに銃を突きつけたのはシエルで、アグニを殺害したのは別の人物でしょう。
犯人はアグニより強く速い!
登場当初のアグニと一戦を交えたことのあるセバスチャンは、アグニの攻撃の速さに驚いていました。それなのに、それを上回る速さでわき腹を刺され、犯人のスピードと力の強さには敵いませんでした。
あんなに強かったアグニよりも強い人物となれば、もはや死神や悪魔クラス。また、女王の執事のW.チャールズも、とんでもないスピードと強さがあるので、かなり疑わしい人物です。ただ、アグニの背中には複数のナイフが刺されているので、そういった攻撃に長けた人物なのかもしれません。
フィニアンがいち早く気が付いた!シエルと坊ちゃんの相違点。
129話では、シエル・ファントムハイヴ伯爵の出現に、使用人だけではなく坊ちゃんやセバスチャンまで動揺が隠せません。また、セバスチャンがここまで驚くのも無理はありません。だって悪魔召喚の儀式で、自分が魂を食らったはずのシエルが生きていたとなれば、魂が無いのにどうして生きているのかと思うのが普通です。ファントムハイヴ家の屋敷に馬車が到着。使用人たちが”おかえりなさいませ”と出迎えているので、この時点でシエルが帰ってきました。しかし、みんながわからないなか、フィニアンだけはどこか違和感を感じていました。
その相違点とは”眼帯”でしょう。坊ちゃんは使用人たちの前で眼帯をとったことがないので、両目を開いた坊ちゃんの素顔を見たことがないのです。しかし、それはあくまでひっかけで、人間味がないとか生気を感じられない、温かさがないなどという点に気づいたとも考えられますね。
犯人の狙いは坊ちゃんか!?
そもそも犯人がなぜタウンハウスを訪れたのでしょうか。犯人がシエルだとすれば、坊ちゃんへの復讐とも考えられますよね。悪魔召喚の儀式でシエルが犠牲になり、坊ちゃんがセバスチャンと契約して皆殺しになせたことはわかっていますが、20巻で描かれた坊ちゃんが自分の意識に閉じこもったシーンでシエルが言う”僕を犠牲に手に入れた力”。
「お前があんな選択をしたせいで沢山の人が犠牲になったんだよ」
『黒執事』20巻95話から引用
坊ちゃんは、自分の汚辱を晴らすため、自分のためだけにセバスチャンと契約したようです。そのためだけに、シエルをも踏み台にしたのであれば、復讐として坊ちゃんの命を狙ったとも考えられます。坊ちゃんが何かを恐れている、双子だったと口にしないなど”選択”と関係があるとしたら、坊ちゃんはいったいどんな選択をしたのでしょうか。
シエル復活はアンダーテイカーが黒幕?
ピザールドールの目的は”ファントムハイヴ伯爵”の復活?
そもそも、シエルは悪魔召喚の儀式の際、ナイフで胸を刺されて亡くなっています。その魂と引き換えにセバスチャンが現れているし、そもそもセバスチャンは嘘をつかないので、魂を食らったことは間違いないはず。それなのに、シエルが平然と現れたら、さすがのセバスチャンも驚愕の表情を見せてもおかしくありません。いったい、これはどういうことなのでしょうか。
ここでもアンダーテイカーが何かに関わっているとしたら…。そもそも、ファントムハイヴ家の事件で、あのヴィンセントがそう易々と火事で亡くなるというのも疑問ですが、アンダーテイカーとヴィンセントの間には、並々ならぬ思いがあったようですね。
火事でヴィンセントは骨の髄まで焼けたというのはアンダーテイカーがハッキリ言っているので間違いないかもしれませんが、魂が回収されたかどうか疑問です。ただ今回、シエルは蘇生されたピザールドールではないかと考えています。悪魔儀式で犠牲になり、命を落としたはずのシエルが、そのままの姿で出てくるのはあまりにも不自然です。
シエル蘇生にはヴィンセントのシネマティックレコードが関係?
アンダーテイカーが襲撃事件の時ヴィンセントの魂を回収し、その後シエルの遺体に入れてシネマティックレコードをつなぎ合わせて蘇生させた。そのための重要な”素材”として、スフィアミュージックホールで、”シリウス”を集める必要があったのではないかと。
かつてのシエルからは考えられないような、冷たい眼差しは、かつてのヴィンセントが時折見せる冷たい表情にソックリです。特に、131話でヴィンセントとディーデリヒと話している時のヴィンセントの目と、130話でシエルがセバスチャンの名前に反応した時の目が、怖いくらい良く似ています。
もしくは、初めにシエルの魂を誰かのものとすり替えておいて、シエルとヴィンセントのシネマティックレコードを繋ぎ合わせたというのはどうでしょうか。後者の場合、セバスチャンが食らったのは別人の魂ということになってしまいますが、復活したシエルは、アンダーテイカーが何らかの手を加えていると考えられます。
性格が正反対のふたり
ひとりは伯爵、もうひとりは”おまけ”の一人
シエルと坊ちゃんの性格は正反対。坊ちゃんから見たシエルは「元気で優しくて強くて頼れるお兄さん」でも、坊ちゃんの心の奥底に、「伯爵になれないのは僕だけ」という想いも隠れていました。
坊ちゃんは、病弱で気が弱くて怖がりだったので、ある意味シエルにコンプレックスを抱いていたのです。でも、シエルは坊ちゃんのことが大好きで、ずっと坊ちゃんと一緒に居たいという考えでしたが、坊ちゃんの考えはそうではないように思えます。
シエルが坊ちゃんに依存していた?
いずれ大きくなったらロンドンでおもちゃ屋になるという坊ちゃんにシエルは、なぜ僕をひとりにするんだとショックを受けていました。坊ちゃんは伯爵になるシエルに頑張ってといい、シエルは坊ちゃんの夢を応援できない対照的なふたり。
病気がちな坊ちゃんの世話を焼いたりしてた描写も多いことから、弟の面倒を見るという見方もありますが、違う視点から見るとシエルが坊ちゃんに依存しているように思えます。
アンダーテイカーにとっては”どっちもファントムハイヴ”
過去シーンでは、アンダーテイカーと双子が絡んだシーンがありますが、テイカーには、どっちがシエルでどっちが坊ちゃんか見分けがつきません。
「まぁ どっちでもいいか 小生にはどっちもファントムハイヴだ」
『黒執事』26巻131話から引用
このセリフにも鍵が隠されていると感じました。何気なく発してはいますが、アンダーテイカーにはどっちがどっちでもいいのだとすれば、シエルの蘇生にこだわってはいなかった。彼が蘇生したかったのは、”本物のファントムハイヴ伯爵”。
いわゆるヴィンセントのことを示しているんだと推測しました。そうなると、先ほどの「魂の亡くなったシエルにヴィンセントの魂を入れて、シネマティックレコードを繋いで蘇生させた」が有力ではないかと考えます。