ヴィルヌーヴの過去作から今作を紐解く!映画『ブレードランナー2049』を考察してみた





名作SF映画『ブレードランナー』の35年ぶりの新作となる『ブレードランナー2049』が公開されました。公開されてから賛否両論の今作を、監督のドゥニ・ヴィルヌーヴの過去作と比べることで読み解いていきます。今作を観て疑問の残る方はぜひ読んでみて下さい!

映画『ブレードランナー』の歴史と特徴

リドリー・スコットが作り出したSF映画の金字塔!


出典:映画『ブレードランナー 2049』公式‏Twitter

今回紹介する映画『ブレードランナー2049』は、1982年に公開された映画『ブレードランナー』の30年後の物語を描いた正統な続編になります。前作は監督リドリー・スコットの代表作として、世界中のSFファンから愛されている「SF映画史に残る傑作」という作品として語られていますが、公開当時は興行的に失敗した作品でもありました。

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2017-04-26

今作『ブレードランナー2049』の世界観の特徴は?


出典:映画『ブレードランナー 2049』公式‏Twitter

『ブレードランナー』を語る上で外せないのが世界観です。1982年以前には存在しなかった「退廃した摩天楼」という衝撃的なビジュアルを作り出したことによって、前作はそれ以降の未来世界のイメージを決定づけたのですが、今作はどうだったでしょうか。

今作で最も印象的なイメージとして挙がるのは「雪」でしょう。これは前作のイギリス人監督作品が「雨」のイメージだったのと比較すると、監督のヴィルヌーヴはカナダ出身であり、カナダをイメージさせる「雪」によって、監督自身をKに投影させた作品と言うことが出来るかもしれません。また、主人公Kの手のひらに乗った雪がすぐに解けて消えてしまうイメージは今作のテーマ性も表しており、上手な演出になっているのではないでしょうか。

今作の未来世界観も前作のそれを大きく外すことなく、それをさらに30年進んだらそうなるであろう未来のイメージも提示しています。ラヴが眼鏡越しにミサイルを発射するシステムは現在のドローン技術が進んだ姿でもありますし、ホログラフィーのジョイがセクサロイドと重なる場面は、VRを使ったポルノ製品の発展形のようでもあります。盲目のウォレスが使用する目の代わりとなる装置も、人間の視神経に直接働きかけることが出来れば実現可能ですので、近い将来に実用化される可能性が高い装置でもあります。

今作は前作ファンを喜ばせるための作品なのか?

今作は前作の主人公デッカードが登場し、彼とレイチェルが前作の後、実は子供を産んでおり、それがもしかしたら今作の主人公Kなのかもしれない、という展開になっています。前作にも登場したガフが折り紙で羊を作るシーンなど、前作のファンへのサービスも多く、このファンサービス的な種明かしが今作の賛否を分けてしまってもいます。

しかし、筆者個人の意見としては、『ブレードランナー』という名作SFの世界観と、今作の監督ドゥニ・ヴィルヌーヴの世界観が混ざり合ってしまった、というところに今作の魅力はあるのではないでしょうか。

ヴィルヌーヴ監督の作家性をおさらい!

常に描かれるのは「親子」の物語


出典:映画『ブレードランナー 2049』公式‏Twitter

ヴィルヌーヴの作家性に関しては以前書きましたが、少し言い換えたい部分もありますのでもう一度おさらいとして解説します。ヴィルヌーヴは様々なジャンルの映画を撮っており、作品の一貫性が無いように思われがちですが、彼の映画に共通しているのは「親子」の物語が出てくるということです。

『灼熱の魂』や『メッセージ』などはすぐに「親子」の物語であることが分かりますし、表面的にはその様に見えない作品でも、『複製された男』の主人公アダムは母親の支配から逃げることが出来ない男、『ボーダーライン』で最後に映るのは父親を殺された子供でした。

強烈な「母性」を持った女性たちとは?

ヴィルヌーヴの「親子」の描き方の中で特に多いのが強烈な「母性」です。『メッセージ』、『灼熱の魂』は言わずもがな、『渦 官能の悪夢』では主人公は大女優である母親という存在にプレッシャーを感じ、『静かなる叫び』では銃乱射事件の犯人は事件直前に母親に手紙を出し、なおかつ事件被害者も母親へと変化します。『プリズナーズ』では事件の中心となるホリー、『複製された男』では上記の通り主人公の母キャロラインが「母性」を象徴します。

ヴィルヌーヴの作家性を再定義してみると…?

以前の記事では彼の作品のテーマとして「幼少期、または産まれる前から歪んだ運命を歩むことが決定づけられた人々の話」という表現をしており、今回の『ブレードランナー2049』にも当てはめられる表現ではありますが、更に正確に言うとするならば、「親子(特に母子)という絶対的な繋がりが原因で、歪んだ運命から抜け出すことができない人々の話」と言うことが出来ます。

また彼の全ての作品において、「親子」における「子」の方が自分の運命から抜け出すことが出来ない、という結末になっているため、登場人物を少し見放した視点で描いている、というのもヴィルヌーヴ作品の特徴かもしれません。これら、ヴィルヌーヴ作品の特徴を踏まえた上で、『ブレードランナー2049』を読み解いていきましょう。