あの触覚?アンテナ?で何かと交信しているという噂もある、6つ子中最も謎の深い十四松。第1期でその謎を深める一方で理屈の通じぬ最強っぷりを見せた彼を、最強だと謳うファンは多いです。はたしてそれは真なのか!? 検証してみたいと思います。
記事の目次
ハッスルマッスル担当の松野家五男・松野十四松
プロフィール
- 誕生日:5月24日
- 血液型:A型
- イメージカラー:黄
- 特徴:アホ毛が1本、いつも開いている口、海パン
- 担当:テンション、フィジカル、ケモノ
「ハッスルハッスル!マッスルマッスル!」の口癖の通り、いつも大声でハイテンションのフィジカル担当。次々と野球・プロレスがらみの奇行をぶっこんでくる、松野家五男・松野十四松。その姿は公式の二つ名「明るい狂人」そのものです。何の説明もなくケモノ役を担当することがあるのも彼のみで、6人の中でもかなり個性の強い松。ちなみに野球経験は第25話が初。
かわいい担当の末っ子・トド松からマスコットキャラという立ち位置をさっさと奪い、意味不明な言動と、動物&子供のような憎めないキャラでその地位を盤石にしました。登場人物中唯一「十四松祭り」という特別回を与えられ、オチにされることも多いことなどから、必然的に彼の特殊なキャラクターは作中で目立っています。しかし底抜けの明るさは仮面にしかすぎず、まるで深奥には深い闇を持て余しているかのような謎の部分も依然残されているのです…。
声優・小野大輔がキャスティングされた理由は“人柄”
出典:TVアニメ『ジョジョの奇妙な冒険』公式Twitter
十四松の担当声優は、『涼宮ハルヒの憂鬱』(古泉一樹)、『黒執事』(セバスチャン・ミカエリス)、『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズ(空条承太郎)などで知られるフリー声優の小野大輔。一松役の福山潤と同い年で、神谷浩史はじめ他の松声優たちとの共演も多い中堅です。
『おそ松さん』の監督らがあえて、甘い低音で知られる小野を十四松役に選んだのは、声よりその人柄による部分が大きかったのだとか。彼の真面目なのに発言は異常だったり、大人しくしていたはずが突如誰よりも暴走したりする不思議な面が、十四松に合っていたということでしょうか。小野は小野で、十四松に同化したかのようなハッスル&マッスル台詞を次々と生み、小学生から大人の女性まで広く人気を獲得しました。
十四松が最強たる理由「風邪ひいた」→「灯油」
十四松は実は松野兄弟中最強ではないかと考える人は少なくないことでしょう。初期からの常識の通じぬ狂気?理屈を超えた聖人?のようなキャラクターづけからもその風格は漂っていましたが、彼が最強たるのは何もただの天然癒しキャラとしてだけではないと、回を重ねるごとに読者と登場人物たちは知らされることになります。
十四松の異常性を確固たるものとしたのは、第14話「風邪ひいた」から第17話「十四松まつり」を挟んだ、第23話「灯油」までの流れでした。風邪をひいて沈黙を続けていたかと思えば一転、細菌(?)となって兄弟たちの体に入りウイルスを凌駕し、「十四松と手術」、「十四松パン」では恐怖ぶんの投げオチ! さらに極めつけが第23話「灯油」で、この回にて十四松はトッティも真っ青のサイコパスっぷりを発揮しました。打算の裏打ちもある聖人にすら見える狂人なんて、どう太刀打ちできるっていうの…。
VSおそ松!「恋する十四松」ほか
「恋する十四松」でのおそ松の気遣い
十四松の恋愛について描かれた第9話「恋する十四松」。この回でスポットが当たったのは十四松ですが、この恋物語の陰の立役者となったのは、長男・おそ松でした。十四松には笑顔を見せる彼女の、おそらく消せないつらい過去を偶然知ってしまったおそ松。しかし彼は、それを弟にぶちまけてブレーキをかけることはせず、本人の恋心を尊重して見守りました。結果、十四松の告白は実りませんでしたが、おそ松は落ち込む弟の背中をさりげなくも優しく押して、この恋を悔いのない思い出にすることに一役買いました。
この回において、あくまで頼れる兄貴として、十四松に対して振る舞ったおそ松。公式でも何度か最強と謳われているとおり、五男の十四松よりは数枚上手のようです。純粋に恋をする十四松と、彼の意思を尊重しつつも適切なフォローを入れる兄という深みのある関係。ただの恋物語で終わらない名作回でした。
しかし第17話「十四松」ではさすがのおそ松も…
少なくとも精神的には”おそ松>十四松”・・かと思いきや、回を追うごとに発揮される、十四松の人間離れした言動と能力。第14話「風邪ひいた」でも、おそ松は十四松の異常性に恐れをなしていた様子でしたが、その恐怖を決定的なものとしたのが、第17話「十四松まつり」のラストエピソード「十四松」でした。
ふと十四松の異常性に疑問を呈したおそ松の一言から、その原因究明に乗り出す兄弟たち。アルバムまで紐解いてみても、結局謎は深まり闇は濃さを増すばかり! さすがの長男もアンタッチャブルな何かを感じ取り、この件はなかったことにして生きていくことに決めたのでした。十四松の深淵には、長男・おそ松も完敗!? とはいえ十四松と同じくらい自分に正直に生きるおそ松は、一緒に底抜けのバカをやれる稀有な存在でしょう。
VSカラ松!「六つ子に生まれたよ」ほか
いい年して無職童貞であることと壊滅的なイタさを除けば、心優しい常識人と言えなくもない次男・カラ松。彼は十四松には圧倒的に振り回される側です。例えば第17話「十四松と移動」では移動手段に使われ、第20話「スクール松」ではおそ松と並んでおびえるだけ。まあ、兄弟にかまわれたがりで強く出られると断れない彼の性格を考えれば、当然といえるでしょう。
しかし第8話Cパート「六つ子に生まれたよ」では仲良く屋根の上で歌っており、前述の「十四松と移動」でも2人でパチンコに出かけています。偏見泣く人と付き合う十四松だからこそ、他の兄弟たちに無視されるカラ松ともフラットに兄弟付き合いができるのかもしれません。
VSチョロ松!「十四松とコミケ」ほか
圧勝。
…では簡潔すぎるので、数少ない2人の共演回について。唯一2人の会話のみで進む回が、第7話の「十四松とコミケ」です。ツッコミをアイデンティティとするチョロ松は十四松の独特すぎるBL観にひたすらツッコみ続け、最終的には同担拒否されるというやられっぷりでした。
また第15話「面接」を見ても、やはり自分を出せず無個性寄りのチョロ松では、せいぜいツッコむかケツ毛燃えるくらいしかできないのでしょう。ちなみにDVD第一松のショートフィルムでは、いつになくかみ合った2人のやりとりが見られます。
VS一松!「エスパーニャンコ」ほか
一松と最も仲がいいのは十四松という風潮
カラ松「そのへんどうなんだ、一松」
一松「なんでおれに…」
カラ松「あいつと一番一緒にいる時多いだろ」出典:アニメ『おそ松さん』第17話より 藤田陽一(監督)
「十四松」でカラ松が一松に水を向けたとおり、十四松と一緒にいることが多いのは一松です。2人のコミュニケーションは兄弟としては異常で、「恋する十四松」では一松が十四松の素振り練習のためにバットにその身を縛り付け、第20話「教えてハタ坊」では一松が犬役の十四松にリードをつけて散歩していました。2人の間に他の人間が入れない関係があることは間違いないようです。
その理由や経緯は明らかにされていませんが、なんとなくあの2人だからと納得できる空気があります。自分の本音が悟られることを恐れ、猫としか付き合えない一松にとって、動物に近い存在感を持ち深く突っ込んでこない十四松と2人きりは居心地がいいのでしょう。しかしそんな一圧も、十四松の深淵を触れそうになると(第17話「十四松と概念」「十四松」)、さすがに恐怖に耐えられなくなるようです。一方十四松は、彼の闇など意にも解さぬ様子。すなわち、十四松の圧勝!
2人の名作回「エスパーニャンコ」
勝ち負けは別として、この2人に関して触れるべきは、シリーズ屈指の名作回と名高い第5話「エスパーニャンコ」です。この回にてまず、一松の孤独を案じて解決策を探ったのは十四松でした。そして良かれと思って人間の本心を代弁するエスパーニャンコにしゃべってみることをすすめ、それが逆に一松を苦しめる結果となったとき、十四松の見せた笑顔は、それまでにはない意味深なものでした。
そしてラスト、素直になれない一松のもとに唯一のトモダチだったエスパーニャンコを見つけ出して連れていった十四松。最後の最後で一松の本当の本当の素直な本音を引き出したのは、やはり彼でした。
一松が十四松にだけはほんの少し心を許す理由は、おそらくこういったところにあります。それをはっきり語ることなく、間や影といったさりげない演出と台詞で深く感じさせた感動回でした。
VSトド松!「トド松と5人の悪魔」ほか
ドライモンスターと呼ばれる末弟・トド松ですが、十四松に対してのみどことなく優しいと感じているのは私だけではないはずです。振り返ればそれが初めて見られたのは第4話「自立しよう」でした。そこにはなんと居間で十四松の野球盤に付き合ってあげるトド松の姿が! 他の人間相手なら、そんな昭和な遊びに付き合ってあげること自体考えられません。
他にもおでん屋で優しい表情で談笑していたり(「カラ松事変」)、十四松だけトイレにもゴミ箱にも捨てなかったり(「トド松と5人の悪魔」)と、明らかに十四松にだけ扱いが優しいのです。あえてにせよ合コンメンバーに十四松を選ぶのも、まともな判断とは思えません。
しかしそんなトッティも、第14話「トド松のライン」では十四松に若干引くほどなので、勝敗は引き分け…もとい、「灯油」の闇で震え上がらせているので、やはり十四松のサヨナラ特大ホームラン勝利!
十四松最強伝説!それはあの感動回にあった!
兄弟たちとの勝敗をここまで論じてきましたが、十四松が他の兄弟たちから抜きんでている要素は実ははっきりしています。それは「恋する十四松」で一応ギリギリ彼女がいたといえなくもないことです。無職童貞には違いないでしょうが、十四松のすべてを(おそらく)心から愛してくれた女性がいるだけでも、彼は“勝ち”組といえるのではないでしょうか。しかも最後はすがることなく男らしく、全力の笑顔で彼女を送った十四松。こんな男らしい見送り三振は彼にしかありえません!
「エスパーニャンコ」などでの立ち回りを見ても、彼には他の人間にはない人を幸せにするエネルギーがあるのではないでしょうか。それはおそらくあのたまに広がる黒目の奥に…? その特別なエネルギーが彼女や兄弟を笑顔にし、有無を言わせず灯油を買いに行かせたりするのです。そんな十四松がやっぱり最強! 彼にはこれまでどおり、自分らしさを偽らず生きていってほしいものです!