第1期でツッコミ常識人から意識高い系クズのライジングシコースキーまで見事な変貌を遂げた松野チョロ松。その転落の道のりを追うと、彼の本質が見えてきます。兄弟たちとの関係も含め、彼の人間性を考察してみました。
記事の目次
実は一番クズ?松野家三男・松野チョロ松
プロフィール
- 誕生日:5月24日
- 血液型:A型
- イメージカラー:緑
- 特徴:への字口、黒目が小さめ、アホ毛がない(潔癖症なのでなでつけている)
- 属性:自意識ライジング童貞
第1話からツッコミを一手に担い目立っていた松野家の三男。また兄弟全員無職童貞という現状を変えようともがいていたことから、真面目で唯一の常識人という印象も与えていました。しかし初期から公式で「誰よりもボケに回る時がある」と書かれているとおり、天然の最低な言動で周りから総ツッコミを食らうこともしばしば。
彼が誰よりもクズな言動を見せるのは、主にアイドルやトト子などの女性がらみのエピソードにおいて。誰よりも童貞精神が濃く、人一倍女性に興味があるものの、異常に高い自意識によってそれを無理に隠そうとした結果、余計に失態をさらすという悪循環に陥ります。回が進むごとにクズさがダダ漏れていき、最終的には「ライジングシコースキー」という不名誉なあだ名を浴びせられるに至りました。
声優・神谷浩史ならではのツッコミ&ビューティージーニアス
チョロ松の声を担当する声優は、女性から絶大な人気を誇る神谷浩史。代表作は『夏目友人帳』(夏目貴志)、『進撃の巨人』(リヴァイ)、「斉木楠雄のΨ難」(斉木楠雄)など。アニメ以外にも歌やラジオ、イベントなどで活躍しています。プライベートでは、声がそっくりな弟が1人いる長男。
神谷の持ち味は活舌の良さと間の取り方の上手さ。よって怒涛のツッコミをこなすチョロ松はハマリ役のひとつではありますが、どちらかといえばF6での頭脳明晰内気キャラの方がより神谷らしいといえるでしょう。特にF6バージョンのEDは流れるような小気味よい台詞と純なキャラが聴きどころ。また会話劇に長けていて、後半はそれが生かされた回が多いです。
ツッコミキャラの中にボケが見え隠れしていた初期
選ばれしツッコミ役だった幻の第1回
悪ノリが過ぎたせいか、放送後間もなくお蔵入りになった『おそ松さん』幻の第1話。昭和の名作を21世紀にアニメ化することに楽観的な他の兄弟たちに対し、チョロ松はひとり不安におびえ、やりたい放題のパロディに逐一ツッコミを入れ、最初から大活躍でした。視聴者の代弁者という立ち位置のためモノローグも多く、主役か?というくらい特別感がありました。
少なくともこの時点で、最もキャラクター性を視聴者に印象付けたのは、チョロ松だったことでしょう。唯一のツッコミ担当で常識人。それが放送開始当初のチョロ松の個性だったのです。
ツッコミに加え就活で常識人アピール
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そして続く第2話「就職しよう」では、さらに常識人ぶりをアピールしました。自分だけでなく兄弟全員の就職を促し、それでもやる気を出さない兄弟に丁寧にツッコみます。さらに第4話「自立しよう」でも、クズさで親にアピールしていく兄弟たちについていけず、最後まで残ってしまいました。
このあたりで視聴者は思ったはずです。他の6つ子は一点の曇りもないクズだけど、チョロ松だけは苦労性の常識人だと。誰よりも早く、他とは違うキャラ付けがなされたのがチョロ松だったのです。
しかし今思えば当時から色々おかしなところも…
しかしそれは見せかけだったと後にわかるわけですが、今思えば初期からチョロ松には「常識人??」と首をひねるような言動が見られます。第2話「おそ松の憂鬱」で無収入のくせにアイドルに入れあげているのはスルーするとしても、「自立しよう」では自分のニート生活の安泰のために兄弟と団結したのは明らかにクズの所業。その後、親へのアピールに孫を切り札に使う点にも、親に寄生することへの必死さがうかがえます。それに何より、自分に孫を保証できる甲斐性があると思っているところが救えません。自己分析の全くできていないクズです。
他にも第2話でのシュールなデリバリーコントや第3話でのパチンコ警察を見れば、彼が他の兄弟たちに遜色ないクズだということがわかろうというもの。しかも就職就職と言いつつ、全く実行できていないわけですからね。むしろ一連の就職活動やツッコミが常識人の「フリ」なのでは? だとすると、あまりにもクズ過ぎます…。
「童貞」属性がひたすら強くなる中期
初のぶっ壊れ回はドルオタ全開の第4話「トト子なのだ」
さんざん常識キャラをアピールしたタイミングで落とされたチョロ松爆弾が、第4話「トト子なのだ」でした。唐突に1人だけトト子のマネージャーという立ち位置で登場。畳みかけるようにヤラセの記者会見を展開し、終始トト子ちゃんを絶賛。長男と末弟から「チョロ松は女がらみだとポンコツ」ということも明かされ、アイドル狂いの童貞キャラもこの1話で完全に定着しました。思えば予告の時点で気づくべきだったわけですが…。
第3.5話では童貞ヒーローへのツッコミ役で参戦と見せつつ、最終的には希望で股間を膨らませました。どうやら兄弟と横並びが嫌なだけで、童貞属性は最も強いようです。クールぶるからこそ押し込めた欲望が温室栽培される、危険な童貞・チョロ松!
長所?短所? F6でも一貫して女には弱い童貞・チョロ松
おそ松さん公式アンソロジーコミック 【F6】(出典:Amazon)
その後も童貞キャラはチョロ松の中でツッコミキャラを凌駕(りょうが)するほどの勢いで膨張し、それを兄弟にいじられることも増えていきます。その最たるものが第13話「事故?」ですが、これについては後述。第10話「イヤミチビ太のレンタル彼女」、第19話「忍者シコ松」、第22話「希望の星、トド松」と、深夜とはいえ地上波でやりすぎでは…というギリギリ(アウト?)ラインまで、童貞チョロ松の生態が描かれました。
しかし一方、F6のチョロ松は同じ童貞(推定)キャラでも、正反対のさわやかさです。ルックス(というより表情の描かれ方)の差もさることながら、赤面しはにかむ姿や紳士的な振る舞いには、好印象しかありません。ぜひ本編とF6を交互に見て、バランスをとってほしいところ。童貞は欠点じゃない!
第13話「事故」に見る兄弟たちとの関係
チョロ松の“アピール”は板挟みの兄弟関係のせい?
チョロ松のツッコミキャラが80%ほど崩壊し、「チョロシコスキー」「自家発電三郎」といった不名誉なあだ名とともに童貞ダメキャラが定着したのが、第2クール一発目の第13話「事故?」でした。この回は様々な点で衝撃的でしたが、チョロ松に関して言えば、彼の人格形成の元が見えた回と言えます。おそらく彼がツッコミや常識人という“他とは違うスタンス”を演出していたのは、三男という半端な立ち位置のせいなのです。
上2人がそれぞれ違う個性を迷いなく生きているのを見て、チョロ松は自分だけの個性を模索したことでしょう。兄のようにはなれないしなりたくない、もちろん弟よりは上でいたい。そう願ってきたにもかかわらず、結果は兄弟全員20歳を過ぎても等しく童貞ニート。半端な立ち位置で思ったように個性を確立できず、それでもそこに甘んじたくはないという状態で自分を保つ方法が、ツッコミと就職活動というアピールだったのでしょう。
チョロ松をいじりツッコみたおす、おそ松とトド松
“アピール”に地道を上げるチョロ松をいじり、ときに厳しく的確なツッコミを入るのが、長男・おそ松と末弟トド松です。チョロ松の“アピール”をことさら苦々しく思っているようです。
トド松がチョロ松を嫌う理由は明確です。片やファッションに敏感でおしゃれ、兄弟には秘密で行動するトド松。片やさえない着こなしのアイドルオタで、アピールばかりで行動に移さないチョロ松。正反対の2人が相いれないのは当然というものです。
ではおそ松はというと、チョロ松の言動を単なる“アピール”と分かったうえで、安心していじっている感があります。現状から抜け出せないこと前提の反抗期のようなものなので、何の心配もいらないのでしょう。そしてそんなおそ松の態度がさらに、チョロ松のささやかな反抗である“アピール”を加速させていくのです。
意識高い系クズの完全体!第19話「チョロ松ライジング」
「事故?」で最悪の醜態をさらしたチョロ松ですが、彼の底はこんなものではありませんでした。彼の最終兵器は「ツッコミ」「童貞」を超えた先、第19話「自意識ライジング」にありました。そう、そもそも、チョロ松のツッコミキャラと童貞キャラは、彼の常人離れした自意識を傷つくことから守ってきたことの副産物なのですから。そうして彼が育ててきた自意識が、第19話では形となって現れました。
「自意識ばかりを高めすぎると他人に迷惑をかけるし自分自身も壊れるぞ」という、現代の教訓を示した回であり、チョロ松の本質が「傷つきたくない」「失敗したくない」という自意識にあることを比喩的に表した回です。その後は怪我の功名というべきか、自分のダメさを認めることができるようになりました。
第1期のチョロ松を振り返ってわかること
こうして振り返ると、最初のツッコミ・常識人キャラから一枚ずつ皮をむくようにダメダメな本性を小出しにしてきたことがわかります。そして最終的に自分を飾ることをやめ、素のダメさを認めて第21話「神松」、第23話「ダヨーン族」では完全に開き直って誰よりも言動がクズでした。
しかしその変化は、あくまで表面のメッキがはがれただけ。すべてを踏まえて最初から振り返ると、隠しきれないクズさが随所に現れているのです。
待望の第2期!完全体のチョロ松はもう変わらない?
第1期で計画的にクズさをさらしていったチョロ松。こんな丁寧な人物描写をするスタッフが、満を持しての第2期で新たな手を用意していないわけがありません。一体ライジングの先には何があるのか。それをどんなあだ名で呼ぶのかも含めて、プロの本気が試されることでしょう。
…というか、まあ好きなように楽しめばいいんですよ!