『サイコパス』1期のヒロイン、2期・劇場版と主役を務めた常守朱。あどけなさは完全に抜け、劇場版ではすっかりたくましく成長した姿をみせました。でも主人公ながら彼女については色々謎も残ります。2期でのタバコの描写、そして狡噛への恋心はあったのか、無かったのか。劇場版までの彼女を追いながら考察しました。
記事の目次
『サイコパス』常守朱の年齢・声優等のプロフ紹介
シビュラシステムに物怖じしない『サイコパス』のヒロイン
常守朱は『サイコパス』1のヒロイン、そして2期、劇場版では主役を務めたキャラで、公安局の監視官。誕生日は2092年4月1日、公安局に入ったのが2112年ですから1期当時20歳でした。学生時代あらゆる職業の適正値がトップクラスだったのにかかわらず「公安局」を選んだのは「自分にしかできないこと」をどこまでやれるのかと思ったから。
一見かよわげながら、芯は強く、彼女なりの「信念」をもって一生懸命事件に対処するさまはあの狡噛も一目置くほどでした。1期では新人ながら狡噛始めクセのつよい執行官たちの扱いに戸惑いつつも、彼らにも認められる存在に成長していきます。
常守は免罪体質というわけではない
どこまでもクリアなサイコパスを持つ彼女ですが、それは「他の人よりもサイコパスが曇りにくく、犯罪係数が上がっても平常値に回復するのが速い性質」なだけであり、決して免罪体質というわけではありません。それはアニメ1期13話で槙島の記憶をたどりモンタージュを作成するのに協力した際に少しサイコパス値の上昇が見られた(でもすぐに回復した)ことからも確認できます。
常守朱を演じるのは声優の花澤香菜
常守朱を演じるのは声優の花澤香菜です。花澤は1989年2月25日生まれで、幼稚園の頃より子役としてバラエティ番組やドラマなど多数出演していました。彼女が14歳の時、2003年放送のアニメ『LAST EXILE』のホリー・マドセイン役として初めて声優に挑戦。その後は大学に通いながら現在所属の大沢事務所と契約し、大学卒業後はタレント専業となりました。2012年には歌手デビューをし、2013年には渋谷公会堂などでのコンサートが実現しています。2015年、第九回声優アワードにて助演女優賞を受賞。
『サイコパス』常守朱の他、『ニセコイ』の小野寺小咲役、『東京喰種トーキョーグール』の神代利世役、『3月のライオン』の川本ひなた役、『orange』の高宮菜穂役など、多数の作品に出演しています。
シリーズを通してブレない常守の姿勢
親友を眼前で槙島に殺された事件で彼女の出した結論
PSYCHO-PASS サイコパス VOL.7(出典:Amazon)
法が人を守るんじゃない、人が法を守るんです
アニメ第22話「完璧な世界」より引用
アニメ1期は狡噛を主人公にしながら、新人監視官として常守がどのように成長していくのかも同時に描かれていました。その中で彼女にとっておそらく一生忘れることのできない出来事が起こります。13話「聖者の晩餐」で、常守の親友、ゆきが槙島に捕らわれますがドミネーターで執行することができず、ゆきはそのまま彼女の目の前で殺されてしまいました。そしてその事件は彼女に「シビュラシステムとは何か」を考えさせるきっかけともなりました。
目の前で明らかに犯罪が行われようとしているのにシビュラシステムは悪と判断せず、だから裁けない。槙島は猟銃を放って常守にそれで自分を撃てと言いますが常守はできませんでした。そんなシステムが本当に正しいと言えるのか。そんなシステムに全てを任せていいのか。彼女がこれらの問題に最終的に答えたのが上記のセリフに集約されていると思います。彼女はあくまで罪人を「逮捕」し、「法によって裁く」ことを選ぶのです。
「かわいい」だけじゃない!成長した姿を見せた2期
楽観だろうと選ばなければ実現しない。社会が人の未来を選ぶんじゃないわ。人が社会の未来を選ぶの。私は、そう信じてる。
アニメ2期第11話「WHAT COLOR?」より引用
2期では鹿矛囲桐斗という、以前起きた飛行機事故で亡くなった184名の体・脳を手術によってつなぎ合わせて作られた人物が相手となりました。彼の場合はシビュラシステムが認知せず、数値すら計測できないというイレギュラーな事態が発生し、常守は多くの仲間を失いながらも立ち向かっていきます。
2期では常守にとっては「シビュラ」の正体が分かっている状態だったため、お互いがお互いの反応を探り合っているという印象が濃くみられました。最終的に「集団的サイコパス」をシビュラシステムが認め、鹿矛囲桐斗にようやく「色」がつき、裁けることとなりました。しかし、今後この「個人はクリアでも集団的にはクリアでない可能性」が生まれることで魔女狩りのようなことが行われ、社会は大混乱になるかもしれない、というシビュラの意見に常守は「私はそこまで悲観しない。訪れるのは、正しい法と秩序。平和と自由かもしれない」と言い、上記のセリフで締めくくります。
1期でもそうでしたが、ここでもやはり「人間を信じたい」常守の姿勢が表れていると思います。そして狡噛もいない、宜野座も執行官となった今の公安局を、ブレることのない信念で引っ張っているのです。
すっかりたくましくかっこよくなった劇場版
歴史には敬意を払いなさい、シビュラシステム。
『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス』より引用
劇場版は予告トレーラーが出た時点で、常守が2期よりさらに進化しているなと感じさせました。1期の頃のあどけない表情、たよりなさげな様子はもう全く見られません。劇場版ではシビュラと向き合うというよりはシビュラシステムをなんの疑問もなく受け入れているSEAUn(シーアン)の人々、さらにはそれを悪用して都合よく利用していた上層部との戦いでしたが、最後にその意識を変えさせようと常守が投げかけた言葉が上記のセリフでした。
人間たちがこれまで積み上げてきた色々の上にシビュラシステムがあるのだということを理解しなさい、ということなのだと思いますが、ここにも、彼女が1期のころからそうであったように、人間たちを信用し、また彼らの創る社会について悲観的になっていないことが表れていると思います。
様々な事件と向き合い、精神的肉体的にたくましく成長した常守ですが、根本的なところはブレずに貫いているのです。
狡噛への恋愛感情はあった?タバコのシーンや劇場版から考察してみた
常守朱はタバコを吸っている?
アニメ2期で、常守が部屋でタバコを吸っているのではと思われるような描写があり(しかも狡噛が吸っていたのと同じ銘柄)、ファンの間で物議を醸しました。未成年ではありませんから吸っていても別に問題ではないのですが、1期の常守を見守ってきたファンにとっては彼女が喫煙なんて「イメージと違う」という驚きがありました。
またタバコを吸うようになったその原因は何かと考えればそれは間違いなく狡噛のことが絡んでいるのでは?という推測も。つまり、狡噛はどうかわからないですが、常守は狡噛に好意を寄せているのでは?という考えにたどり着き、話題になったわけです。
副流煙に包まれることで狡噛を近くに感じたかったのでは
では常守は本当にタバコを吸うようになったのでしょうか?アニメをよく見てみると煙の出ているタバコをお香のようにして置いているようなシーンは見られますが、常守が実際に「吸う」シーンは一度もありませんでした。このことから、ファンの間では、彼女は実際吸っているのではなく、狡噛の吸っていたタバコと同じタバコの副流煙に包まれることで狡噛ならどう動くのだろうかと思考を働かせるために置いているのではないか、と推測されています。
ただ、ここからは筆者の考えになりますが、いくら狡噛の思考をなぞるためとはいえ、同じタバコの煙に包まれるという行為までくると、常守の狡噛への気持ちは単なる「尊敬」だけでは片づけられないのでは、と思います。公式からは「愛情を超えた信頼関係」と言われ、実質恋愛関係にはないといわれてはいますが(公式単行本「PSYCHO-PASS サイコパス OFFICIAL PROFILING 2」本広総監督のインタビューより)、常守の方には狡噛に対して思慕あるいは恋に近い感情があったのではないでしょうか。
劇場版で狡噛の変わらなさに安心しつつ、自分の気持ちに区切りを
劇場版では、狡噛との再会シーン、そしてその直後から、常守と狡噛の組み合わせが好きなファンにとってはたまらないシーンの連続でした。狡噛が常守をかばうとかそのあと上着をかけてやるとか、常守の方もこの3年の分のたまりにたまった鬱憤をぶつけるシーンは、2期で厳しい表情をしていることが多かった彼女の、久しぶりにかわいらしいところを見れたなと思いました。
久しぶりに会うこととなった狡噛は、彼女から見ておそらく根本的に「変わっていない」と思えただろうと思います。「法に頼らず大勢の人を巻き込んで、独りよがりの意地を通して戦い続ける」姿勢は昔一緒に公安局で事件にあたっていた時と変わりません。日本にテロを仕掛けたのが狡噛ではなかったこと、そして「変わっていなかった」ことを確認することができたことで、常守の目的はほぼ達せられたと言ってもいいでしょう。そのためにここに来たようなものでしたから。
同時に、狡噛へのちょっとした「尊敬」以上の気持ちも、ここで区切りをつけたのではないかなと思います。
3期があるなら常守の立場はどうなる?
シビュラシステムとどう向き合っていくのか
さて、もし『サイコパス』に3期があるとしたら、その中で常守はどのように考え、行動してゆくでしょうか。
彼女の基本姿勢として、シビュラを「監視・牽制」しながら人間たちの可能性に賭けている…といったスタンスは変わらないと思います。今後は常守の「人間だってまだまだ捨てたもんじゃない」という思いに、あの作品の中の人間たちが応えてくれるのかどうか、そこがカギになっていくと思います。
ただ、「シビュラにとって理想的・模範的市民」である霜月監視官が現れたことで「シビュラにドミネーターを突き付ける可能性のある」常守が今後、シビュラにとって邪魔な存在として認識されていくことにならないか、心配なところでもあります。とは言え、シビュラは常守をゆくゆくは自分たちの中に取り込みたいと考えているようですから(霜月はおそらくその対象ではなさそうに見えます)、すぐにどうこうされるということはなさそうですね。
もし狡噛と敵対することになったらどう動くか
小説 PSYCHO-PASS サイコパス 下(出典:Amazon)
そしてもし3期に狡噛の出演があるとしたら、その時常守はどのように彼と向き合うでしょうか。狡噛が執行対象となってしまっている以上、共闘する立場になるとは考えにくいですから、おそらくは反対側の位置に立つことになることが濃厚でしょう。
2期直後の彼女なら少し不安もあったかもしれませんが、劇場版で彼と言葉を交わし、彼の呪縛から逃れることができたことで、今は対等な立場で向き合うことができるのではないかと思います。その場合最終的に、常守と狡噛、この2人がどのような結末を迎えるのか、とても気になります。