『マギ』外伝の『シンドバッドの冒険』は、シンドバッドの幼少時代から七海の覇王となるまでが描かれています。シンドバッドには、なぜ未来を見通す力があるのか、ダビデとの関係や魔装など本編では語られていない情報を、考察を交えて紹介します。
記事の目次
七海の覇王シンドバッドとは
ユナンによって”その力”を与えられた
出典:TVアニメ「マギ シンドバッドの冒険」公式Twitter
シンドバッドは未来を見据える力があります。『マギ』では、この「未来を見据える力」によるトラブルが起きています。この数年後、船乗りだったシンドバッドの父の船に潜り込み、それを知らずに船を出した父親は、幼いシンドバッドは、嵐にみまわれました。何とか命拾いしましたが、帰る方角も分からなくなってしまった父。
すると、シンドバッドが帰る方向を教えたというエピソードがありますが、この力はシンドバッドが生まれる直前、ユナンがシンドバッドを「王の器」に選んで与えた力によるものです。簡単に言ってしまえば、「世界を変えてくれる」と期待したわけですが、ユナンはシンドバッドがあまりにも「王の器」に近しいから、怖いとも言っていました。これが『マギ』で言う、「半堕転の特異点」と「ダビデ」に繋がるということなのです。
シンドバッドとダビデとの繋がり
出典:TVアニメ「マギ シンドバッドの冒険」公式Twitter
シンドバッドがダビデと繋がったのは、シンドバッドが初めて建国したシンドリア王国でのことです。シンドバッドは、若くして複数の迷宮をクリアし、各国を旅しながら仲間を増やしてきました。その結果「八人将」と呼ぶ信頼する仲間が出来たわけですが、その頃は、自分の幼少期の悲惨な経験から、平和で平等な国を創ることが唯一の願いでした。
パルテビア王国の指揮官バルバロッサとの約束の元、パルテビアにある小さな島を買い取ったのです。そこが最初のシンドリア国誕生となりました。しかし、ある事態が起きて、パルテビア王国に宣戦布告してしまったシンドバッド。これが原因で、パルテビアが進軍しシンドリア国は滅ぼされ、一瞬にして平和が崩れ去ってしまったのです。
この戦争により、多くのシンドリア国民が堕転……。シンドバッドは、彼らの黒くなったルフを、すべて自身に取り込んだことで、ダビデと繋がり、声が聞こえるようになったのです。
最初に建国したシンドリア国はなぜ滅んだのか?
バルバロッサの野望とセレンディーネの堕転
平和を望むシンドバッドに、いったい何が起きたのでしょうか? バルバロッサは、パルテビアでクーデターを起こし、王国制度ではなく「独立国民党」の当主という形で、国の実権を握っています。要は、体よく国を乗っ取り、表向きは国を良くしようと振舞っていますが、裏では闇が蠢いている人物。
パルテビアの皇女セレンディーネとの婚姻によって、権力を得たわけですが、当時、セレンディーネはバルバロッサの本性を知りませんでした。しかし、バルバロッサの真の目的を知ったセレンディーネは、憎み恨むようになり、奴の思い通りにはさせないと堕転して「人間をやめた」のです。
シンドバッドの力とシンドリア国の勢力を利用した?
そこでシンドバッドに目をつけ、シンドリア王国の勢力を以ってバルバロッサを打ちのめそうとしました。もちろん、それを言ったからといってシンドバッドが同調してくれるわけではないので、自身のジンの力「ゼパル」でシンドバッドの精神を操って、バルバロッサに宣戦布告させたというわけです。
いくら精神を操られていたからといっても、バルバロッサはそんなことが通用する人物ではありません。シンドバッドは、バルバロッサと戦う決心をせざるを得なくなってしまいました。まだ、建国したばかりのシンドリアと、パルテビア軍の勢力の違いは明らかで、シンドリア国は無残にも、滅ぼされてしまったのです。
仲間のミストラスとルルムはなぜ『マギ』に登場しないの?
ルルムの死はパルテビアとの戦いではない?
出典:TVアニメ「マギ シンドバッドの冒険」公式Twitter
『シンドバッドの冒険』では、ササン王国で仲間に加わった「ミストラス」という人物と、ヒナホホの妻ルルムという人物が登場しています。しかし、本編『マギ』では、ふたりとも登場しておらず、ミストラスに関しては、弟のスパルトスが八人将となっています。
また『マギ』の32巻317夜で、ヒナホホにシンドバッドは、「奥さん(ルルム)が死んで、男手ひとつでよく頑張ったよ。」というほか、死因が分かるようなことには触れていません。ただ、パルテビア軍との戦いで、亡くなったのだとすると、ミストラスと同じように偲ぶはずですよね。
しかもルルムは、シンドバッドがバルバロッサの「独立国民党」と取引きしていた頃に、4人目を身ごもっており、その後ヒナホホが4人を育てているので、パルテビア軍との戦いで亡くなった可能性は低いかもしれませんね。
ミストラスはパルテビア軍との戦いで亡くなっていた!
出典:TVアニメ「マギ シンドバッドの冒険」公式Twitter
ミストラスは、『シンドバッドの冒険』166夜でのパルテビア軍とシンドリア国との戦いの中で、シャム=ラシュに串刺しにされ、死の間際で力を求め眷族と同化しました。しかし、シャム=ラシュの魔力操作によって体の中を破壊され、体内から爆発が起きて跡形も無く消え去ってしまったのです。最後に浮かびあがるミストラスの笑顔と、それを思い出して大粒の涙を流し、ミストラスの亡骸を抱きしめているピピリカの姿が、何ともいえない深い悲しみを表しています。
スパルトス「…兄が、死んだときは……涙が枯れず……国をも守りきれず心だ兄の無念は、永遠に私と共にあると信じてきたのですが……最近は兄との美しかった思い出だけが蘇えるのです。」
ピピリカ「それは君があの場にいなかったからだよ。私は忘れない。人の焼けるにおい……あの人の、無残な死に顔……」
出典:『マギ』32巻317夜から引用
まさにその場にいたピピリカだからこそのセリフです。ミストラスが命がけで守ろうとした国ゆえに、彼らの絆は他の何よりも強く結びついているのかもしれません。また、ミストラスの死を見たシンドバッドの蒼白した顔が、『マギ』での「自分が目指す争いのない世界」への執着にも繋がっているのでしょう。
シンドバッドが保有するジンについての解説
第1迷宮バアル
出典:TVアニメ「マギ シンドバッドの冒険」公式Twitter
バアルは、ユナンが一番初めに登場させた迷宮のジンで、憤怒と英傑の精霊。シンドバッドの父の形見の剣にやどっており、雷の力を操り、雷の光を発射する「雷光(バララーク)」、広範囲を斬撃する「雷光剣(バララークサイカ)」、剣に集めた力を一気に放出する「極大魔法雷光減剣(バララークインケラードサイカ)」などで攻撃します。眷属となっているのは、ジャーファル、ドラコーン、マスルールとミストラス。
第6迷宮ブァレフォール
出典:TVアニメ「マギ シンドバッドの冒険」公式Twitter
ブァレフォールは、2番目に攻略した迷宮のジンで、鋭い爪と騎馬が特徴の虚偽と信望の精霊。赤い宝石のついた首飾りに宿っており、人間の感覚や思考を鈍くさせ、錯覚を起こします。能力は、大量の氷柱を作って攻撃する大量の氷柱を作って攻撃する「氷獣咆哮破(ガルフォル・ザイール)」、作った氷柱に閉じ込める「氷獣結晶陣(ザルフォル・キレスタール)」などがあります。
第16迷宮ゼパル
ゼパルは、背中に悪魔のような羽がついており、まるで子供のような姿をしたジンです。シンドバッドが右手中指につけている指輪に宿っていますが、初めはパルテビア王国皇女セレンディーネが契約していました。また、ゼパルの能力は、咆哮して相手を眠らせたり、対象にルフを住まわせて精神を操ったりすることができます。かつてシンドリア王国とパルテビア軍との戦いで、自分の命を犠牲にして戦ったセレンディーネ。
「己のルフを捧げることだ。俺がセレンディーネ姫から『ゼパル』を譲り受けた時のようにな……」
出典:『マギ』37巻366夜から引用
金属器使いが自分の能力を第三者に譲り渡すには、たったひとつの手段しかありません。かつて、シンドバッドからセレンディーネと同化したということは明かされていましたが、実際にはセレンディーネが自分のルフをシンドバッドに捧げて同化したということでした。セレンディーネはシンドバッドにパルテビアの未来を託したということですね。
第34迷宮フルフル
フルフルに関しての、詳細は明かされていませんが、33巻でその姿を見せます。狂気と裂闇の聖霊で、背中にはコウモリのような大きな翼があり、肌の色は褐色、悪魔を思わせる長く鋭い爪で、炎か光の玉のようなもので攻撃します。
第41迷宮フォカロル
フォカロルは支配と服従の精霊で、シンドバッドが右手首につけている腕輪に宿っています。長い黒髪と漆黒の羽が特徴で、魔装のなかでも超イケメンな精霊。風を操り巨大台風を作る「風裂斬(フォラーズゾーラ)」などで、相手を攻撃します。眷属となっているのはシャルルカン。
第42迷宮ヴェパール
ヴェパールは、蝶のような羽と触覚があり、人魚のような尾ひれがある女性のジンです。本編にもほとんど登場していないので、何の精霊かなどの詳細は不明ですが、無数の剣を上空から降らせる「千剣時雨(ヴェパール・イステラーハ)」という攻撃を行います。
第49迷宮クローセル
クローセルは、シンドバッドの左手首の金の腕輪に宿るジンで、その詳細は不明です。下半身が虎のようになり、足には鋭く長い爪、大きな剣を武器にして戦います。他、何の精霊なのか、どういった能力があるのかなどは不明です。
シンドバッドの眷属の繋がり
金属器と眷属器の違い
出典:TVアニメ「マギ シンドバッドの冒険」公式Twitter
『シンドバッドの冒険』や『マギ』では、金属器や眷属器などといった用語が出てきますが、ふたつの何が違うのかを説明します。金属器というのは、迷宮をクリアした本人がジンと契約し、精霊を宿すための金属を言い、その金属を通して、ジンの能力を使います。それが金属器使いと呼ばれている人たちで、ジンに認められた「王の器」ということです。
また、眷属器とは金属器使いのジンの力を分け与えられ、主と同様の能力を宿しているのが眷属、それを使う者を眷属器使いといいます。要は、金属器は親で、眷属器が子になるといった具合です。ただ、眷属となれるものは、精霊と契約した主の側にいる者で、なおかつジンに認められなければなりません。
”眷属との同化”の意味
ここでもうひとつ、「眷属と同化」するといったこともできますが、あくまでそれは「悲しい最終手段」。眷属とジンの眷属とが一体化するものですが。八人将のドラコーンがその一例です。強大な力を得ることが出来ますが、一度同化してしまうと、二度と元の姿に戻ることはできません。
本編『マギ』で語られた、アルマトランとアル・サーメンの戦いでは、ソロモン王の眷属たちがジンの眷属と同化して、寄り代(黒ルフと魔力の結晶体)を打ち倒しました。現在現れているジンは、そのときにジンの眷属器と同化した、ソロモンの眷属たちなのです。
『マギ』本編で謎だったことが、外伝『シンドバッドの冒険』で解決することが多々あります。本編でなぜ?どうして?と思った方は、外伝で情報収集して繋げると、納得いく答えが得られるかもしれません。