昨今の流行に乗り量産されているゾンビ映画。状況、ストーリー、登場人物、ゾンビの定義、対策方法etc…様々な部分に趣向を凝らした作品が製作され続けていますが、本当に面白いと言えるものはごくわずか。今回は、そんなゾンビ映画の中でも特にオススメできる8作品をご紹介します。
記事の目次
『ショーン・オブ・ザ・デッド』(2004年/イギリス)
ロマンス、ゾンビ、そしてコメディ!
ショーン・オブ・ザ・デッド [Blu-ray](出典:Amazon)
今作は、ゾンビ映画の金字塔とも言われるジョージ・A・ロメロ監督作『ゾンビ』(原題:Dawn of the Dead)を下敷きにしたコメディ映画。公開時の“Rom Zom Com”(ロマンス、ゾンビ、コメディ)というキャッチコピーの通り、1:3:6ほどの割合で物語が構成されています。コメディ多めです。ふざけまくってます。国民性を揶揄するブラックジョークを織り交ぜたりと自虐ネタも忘れておらず、ゾンビに襲われるという危機的状況でも何度も笑わせてくれます。
ゾンビ映画デビューの方にはうってつけの作品
前述の3つの要素に加え、30歳を目前に自堕落な生活を送っている主人公の成長物語も見どころです。プライベートでも仲の良いサイモン・ペグとニック・フロスト、そしてエドガー・ライト監督の三人は相性が良かったようで、その後も何度か手を組んでいます。監督特有の、細かいカット割りで魅せるスピーディな演出とユルい笑いの不思議な融合はこの頃から発揮されていて、ゾンビ映画デビューの方にはうってつけの作品です。
『REC/レック』(2008年/スペイン)
モキュメンタリーの特性が活かされて恐怖倍増!
最近増えている映画ジャンルの一つに、モキュメンタリーというものがあります。「モック(見せかけの)」と「ドキュメンタリー」を組み合わせた造語で、つまり架空の話をドキュメンタリー風に撮影した映画のことを指します。今作では全編でその手法が用いられていて、他の作品と違いゾンビの恐怖がより身近なものとして感じられます。また、逃げ場がないという閉塞感も相乗されているのでモキュメンタリーの特性がさらに活かされて恐怖増し増しです。
ハリウッドでもリメイクされるほどの完成度に注目
今作に出てくるゾンビは一般的に定義されているゾンビとは少し違い人間的な怖さも含まれていて、登場人物たちが襲われた時の痛々しさや終始続く緊張感はとてもリアルで手に汗握ります。続編も製作されハリウッドでもリメイクされましたが、やはりオリジナルの今作が最も興奮します。ゾンビ映画では珍しいまさかのラストにも満足です。
『ザ・ホード -死霊の大群-』(2010年/フランス)
ゾンビよりも怖いヤツらが大暴れ!
「人々がなぜゾンビ化したのか?」や「最善の対策方法は何か?」といった、近年のゾンビ映画で提示される疑問を完全無視したノンストップゾンビ殺戮映画!仲間を殺された刑事たちが復讐のために乗り込んだマフィアのアジトにゾンビが次々と現れるのですが、最初こそゾンビのパワーとスピードとタフさに恐れを抱くものの、この刑事チームとマフィアチーム、そして途中参戦の隠れキャラが強すぎて逆にゾンビの方が気の毒になっていきます。
目まぐるしく変わる人間関係とその結末から目が離せない
刑事VSマフィアVSゾンビ・・・最後に生き残るのは誰か?復讐要素も並行して描かれながら、手を組んだり裏切ったり喧嘩したり、短時間で目まぐるしく変わる人間関係とその結末から目が離せません。「死霊の大群」というサブタイトルもぴったりで、いつ終わるんだというくらい大量に出てくるゾンビとのバトルは見もの。アイデアばかりに注力したゾンビ映画に飽きた頃に、ぜひお楽しみください。
『ゾンビランド』(2010年/アメリカ)
生き残るための“32のルール”が面白い
ゾンビ映画には大きく分けて2種類あります。1つは、ゾンビの発生から拡大までを描いているもの。そしてもう1つは、すでにゾンビが世界中に蔓延しているもの。今作は後者にあたり、生存者がほとんどいない荒廃したアメリカ“ゾンビランド”が舞台になっています。ジェシー・アイゼンバーグ演じる貧弱な主人公は、自らに“32のルール”を課すことによりこの“ゾンビランド”で何とか生き延びている状況。このルールが他作品とは違い独創的で面白いです。
成長劇やキャラクター性も面白いコメディゾンビ映画
そんなルールも、他の生存者との出会いにより徐々に崩れていき、主人公は否が応でも成長しなければならない状況に追い込まれます。その過程も面白く、登場人物たちのキャラクター性も面白く、文句なしのコメディゾンビ映画になっています。それにしても、本人役で出演したビル・マーレイの使い方が贅沢で驚きました。彼が登場するシーンが最も笑えるかもしれません。
『ワールド・ウォーZ』(2013年/アメリカ・イギリス)
国際的な視点から描かれた新たなゾンビ映画
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ゾンビ映画は舞台が限定的で、広くても一国に収まるものが多いですが、今作は国際的な視点からゾンビが描かれています。アメリカを起点に韓国、イスラエル、ウェールズの研究所といった具合に、移動しながら情報収集を行いゾンビへの対策方法を探し出していきます。ゾンビへの対策が国ごとに違うのも見どころで、まさにタイトル通りの「ワールド・ウォー(世界大戦)」が描かれています。
これまでにないゾンビ対策に驚きと興奮が隠せない
軍隊は登場するものの主人公がゾンビと真っ向勝負を繰り広げることはほとんどなく、主題はあくまで対策方法の捻出。これがまた他のゾンビ映画と違っていて面白いです。ゾンビもハンティングを行う肉食動物並みに獰猛でスピーディで、本能的に恐怖を感じる造形になっているので緊張感が途切れず良いです。また、主人公が最後に辿り着いた対策方法はこれまでにないもので、その着眼点には驚くと同時に興奮しました。
『ウォーム・ボディーズ』(2013年/アメリカ)
斬新すぎる!美女に恋したゾンビのラブストーリー
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倒すか喰われるか。そんなゾンビへの固定概念はどこへやら。ゾンビの主人公が人間に恋をしてしまうという、またまた斬新なゾンビ映画です。この映画がすごいのは、決して斬新な設定で奇をてらっているわけではなく、ゾンビというアイデアを逆手に取って上質なラブストーリーになっているところ。同じ世界で生きることができず対立する関係の人間とゾンビ・・・設定からも分かる通り、『ロミオとジュリエット』がこの物語の下敷きになっています。
2人の愛を試す、『ロミオとジュリエット』よりもハードな困難
『ロミオとジュリエット』は両家の抗争という困難が立ちはだかりましたが、今作ではそもそも生きている人間と歩く屍という、かなりハードな困難が2人の前に立ちはだかります。この困難をどうやって乗り越えていくのか?そもそも人間とゾンビは愛し合えるのか?愛は世界を救うのか?2人の行く末を見届けたとき、その答えが分かります。ゾンビが人間の脳を食べるとその人物の記憶を追体験できるという設定も作風にハマっていて良かったです。
『アイアムアヒーロー』(2016年/日本)
人気コミックを実写化した傑作
特殊メイクや映像加工など、とにかく予算がかかるゾンビ映画。予算をかけずに作るとなるとかなりチープなものになるため、日本では製作自体がほとんど行われませんでした。しかし2016年、ようやく日本にも傑作と呼びたくなるゾンビ映画が誕生しました。細かい部分にまでこだわりを持って丁寧に作り込まれていて、世界に出しても恥ずかしくないと個人的には思っています。事実、海外の映画祭でもいくつかの賞を受賞しています。
邦画史上に残るクライマックスのバトルは興奮必至!
映像技術に定評のある佐藤信介監督や実写化作品の脚本が常に高く評価される野木亜紀子を始めとしたスタッフ陣の実力が見事に結集され、興奮必至のゾンビ映画になっています(劇中ではゾンビという表現はしない)。売れない漫画家の主人公が本物のヒーローになるまでの成長劇も面白く、クライマックスのバトルは邦画史上に残ると言っても過言ではないくらいに最高のシーンでした。
『高慢と偏見とゾンビ』(2016年/アメリカ・イギリス)
不朽の名作にゾンビが足されるとどうなるのか?
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不朽の名作と言われるジェーン・オースティンの『高慢と偏見』にそのままゾンビを足したような意欲作。これを設定頼みと言うべきかパロディと言うべきか、賛否もかなり分かれているようで、「ゾンビを足す必要あった?」という声もチラホラ。確かにツッコミどころもなくはなかったですが、個人的にはあの5姉妹が武術や武器術を駆使してゾンビと華麗に闘うというだけでもテンションが上がりました。容赦なくゾンビを倒す美女は画になります。
建造物のセットやセリフから感じるこだわりは見応え十分
タイトルからはパロディ映画のにおいがしますが、かなり真面目に作られたようで、建造物のセットなども手を抜かずに凝っていてなかなか見応えがありました。セリフも『高慢と偏見』から引用(というかそのまんま?)しているようで、ストーリー面でも本当にゾンビを足したらこうなるだろうということが想定されているように感じました。何にしても前述の通り、ゾンビと華麗に闘う5姉妹が画になるので、今作の魅力はそこに集約されています。
ゾンビ映画の楽しみ方は人それぞれ
いかがでしたでしょうか?色々なタイプのゾンビ映画を紹介しましたが、これはあくまでオススメなので、結局のところゾンビ映画の楽しみ方は人それぞれです。ゾンビ映画だけでなく映画そのものがそうですが・・・。
状況を楽しむのか、ストーリーを楽しむのか、キャラクターを楽しむのか、ゾンビの定義を楽しむのか、対策方法を楽しむのか。ご自身にマッチするゾンビ映画に出会っていただけたら幸いです。