マーベルの人気ヒーロー「スパイダーマン」の新作がいよいよ公開されました!マーベル・シネマティック・ユニバース設立以降初の作品となる今作は、これまでのシリーズと内容も雰囲気も全く違うスパイダーマンになっていましたのでこれを考察していきます!
記事の目次
これまでのスパイダーマンシリーズとの違いは!?
「お約束」をバッサリカット!
今作は主人公ピーター・パーカーが、アイアンマンことトニー・スタークと共にベルリンに同行し、映画『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』の飛行場での戦闘にスパイダーマンとして参戦する場面から始まります。この時点では既にピーターはスパイダーマンとして近所を飛び回り、ニューヨークに出現した謎のヒーローとして話題になっています。
つまり、これまでのシリーズでお約束だったクモに噛まれる場面や、能力に気付く場面、ベンおじさんの死、などは全てバッサリカットされた状態で本作は進んでいきます。この冒頭からも、これまでとは違うスパイダーマンを見せよう、という製作者側の意気込みが伝わってきます。
ホームカミング、新シリーズなのでスパイダーマン誕生の理由を説明する必要があるが、もう蜘蛛に噛まれてからベン叔父さん死ぬまでの流れは皆見飽きた問題を、友人との会話の「そのパワーどうした?」「蜘蛛に噛まれた」「俺も噛まれたらなれる?」「蜘蛛は死んだ」だけで説明するのが画期的だった。
— 犬紳士 (@gentledog) August 13, 2017
ホームカミング、「クモに噛まれて能力発動とかベンおじさんの死とかもうみんな散々観たから省くね、そもそもシビルウォーでデビューさせたから色々省くからそのつもりでヨロシク」という感じの潔いビギンズ的部分の大幅カットはスパイダーマンというブランドとMCUだからこそ出来た技だと思った。
— "ムッシュ"カルビン・コバーン (@Django_Coburn) August 13, 2017
ギャグ満載のお喋りスパイダーマン!?
『シビル・ウォー』に登場した時も話題になったのは、新しいスパイダーマンはよく喋るということです。トビー・マグワイヤ版からアンドリュー・ガーフィールド版へと口数は多くなっていきましたが、今回のトム・ホランド版はこれまで以上によく喋りながら敵と戦います。これは原作のスパイダーマン自体がよく喋るのでオリジナルに近づけた感じでもあります。そして、よく喋って下らない冗談を言う軽いスパイダーマンの雰囲気はこの映画全体の雰囲気ともマッチしています。
オープニングとエンディングに流れるラモーンズの『電撃バップ』が今作の雰囲気を表現しています。突き抜けて明るくて楽しいこの曲同様、今回のスパイダーマンも大変な状況でも明るさを忘れません。ちなみに、ラモーンズはスパイダーマンの舞台と同じニューヨークのクイーンズ地区出身のバンドでもあります。
キャストの人種の多様性にも注目!
クイーンズ地区は移民の町として知られており、世界の中でも最も民族的多様性に富んでいる地域と言われています。これまでのスパイダーマンシリーズは、主人公はしょうがないとしても、ヒロインや友人などはほとんど白人が演じていました。しかし、今作の登場人物は様々な人種によって構成されています。
まず、ピーターがお世話になっているメイおばさんはマリサ・トメイが演じており彼女はイタリア系。ピーターの唯一無二の親友ネッドを演じるのはジェイコブ・バタロンという新人俳優でフィリピン系です。ピーターが想いを寄せるヒロインのリズは設定では黒人と白人のハーフです。ピーターが通っている高校の生徒たちもなどまさに移民の町クイーンズを体現しています。
これは完全に製作者側がクイーンズ地区の「多様性」というものをしっかりと描くという意図が込められており、あの大統領へのメッセージかもしれません。
ピーターにとってバルチャーはどんな存在なのか?
悪役を演じるのはマイケル・キートン!
主人公以外でクイーンズに住んでいる設定の白人キャストは、今作の悪役バルチャーを演じるマイケル・キートンです。彼はティム・バートン版のバットマンを演じた後、一時は仕事が減っていたのですが、2014年の映画『バードマン (あるいは無知がもたらす予期せぬ奇跡)』で見事カムバックを果たしました。
『バードマン』では、彼の『バットマン』でのキャリアをメタ的に使った演出が話題になりましたが、今作も『バードマン』『バットマン』と似た造形のコスチュームを着ていることが話題となっています。また、『バットマン』はマーベルのライバル、DCコミックのヒーローでもあるため、今作の対決は「新しいマーベルのヒーローVS昔のDCコミックのヒーロー」という構図でもあります。
常に「父親」に立ち向かうピーター
この悪役バルチャーですが、今作の中盤で彼はリズの父親だったことが判明し、彼女に恋をしているピーターは動揺します。スパイダーマンはこれまでのシリーズでも「父親」的なる存在との戦いを強いられてきました。サム・ライミ版の一作目の敵グリーン・ゴブリンはピーターの親友ハリーの父親でしたし、『アメージング・スパイダーマン』の敵カート・コナーズはピーターの父親の共同研究者でした。
スパイダーマンにおける敵とは、父親が不在だったピーターにとって、超えなければならない父親的な存在である場合が多く、今回の敵も自分が成長するために戦わなければならない相手だったのです。
監督ジョン・ワッツの過去作もチェック!
監督のジョン・ワッツは今まで長編映画2作しか撮っておらず、長編3作目でマーベルの大作映画の監督を務めることになったのですが、これまでの作品と今作との共通点を挙げるとしたら、「子供が大人の怖い世界を知り成長する話」という部分ではないでしょうか。
1作目の『クラウン』はピエロの変装が取れなくなってしまい、そのまま身も心も悪魔になってしまった男が、子供を食べるために襲い続ける話でした。2作目『コップ・カー』も乗り捨てられたコップカー(パトカー)に乗って遊んでいた子どもたちが、そのパトカーの持ち主である悪徳警官から怖い目に遭わされる話です。
今作でも幼い風貌のピーターは、バルチャーから力の差を思い知らされます。しかし、『コップ・カー』の主人公と同様、現実を知ったピーターは自分が大人になるために父親的な存在であるバルチャーに立ち向かっていきます。
ピーターはスパイダーマンになれたのか?
ヒーローにとってスーツとは?
ピーターは当初、アベンジャーズに加入することを目的にスパイダーマンとしての活動を行っていきます。何とかしてトニー・スタークに気に入られようとし、自分が対処すべきではない相手と戦って市民に危害が及びそうになったために、ピーターはスパイダーマンのスーツを取り上げられてしまいます。
「スーツが無いと何も出来ない」と嘆くピーターに、スタークは「そんな弱い人間にスーツを着る資格はない」と言います。この時点ではピーターはスーツがないとヒーローにはなれないと考えています。
しかし、ピーターはスーツが無い状態でバルチャーに戦いを挑みます。スーツが無くても自分はスパイダーマンである、というヒーローとしての自覚が彼の中に芽生えた場面です。
タイトルの『ホームカミング』の意味とは?
見事バルチャー逮捕に貢献したピーターは、スタークの新しい本部に招かれて、アベンジャーズ加入を打診されますが、「親愛なる隣人スパイダーマン」でいたい、との理由でこれを断り、家に帰ります。
劇中でも「ホームカミング」という高校のイベントが今作では重要な役割を果たしていましたが、物語の舞台クイーンズ地区を上手に表現し、原作に近いよく喋るスパイダーマンを登場させ、そして最後にピーターは家に帰るなど、これまでのシリーズからの「原点回帰」という意味でも「ホームカミング(帰郷)」という副題はピッタリだったのではないでしょうか。
聞いて!
僕が母国の友人とホームカミングを見たので話をするのとき、彼の孫が「スパイダーマン好き。私が迷子になったらきっと助けてくれると思う。」って言ったそうなんだ。よく分かるないんだけど、嬉しいかった!MCUのスパイダーマンが目指したのはそこなんじゃないかなって思ったんだ。— Starkknight (@Starkknight2) August 13, 2017
スパイダーマン ホームカミングは基本的には軽快だけど、マイケル・キートンによる本気の子供激詰めシーンはシャレにならないほど怖いぞ!
— 人間食べ食べカエル (@TABECHAUYO) August 13, 2017
次回作以降への伏線にも注目!
ミシェルとの関係はどうなる!?
ピーターと共にクイズ部に所属している友達が少ないミステリアスな女の子がミシェルでしたが、彼女のイニシャルが「MJ」であることが映画のラストで明らかになります。「MJ」と言えばもちろん、サム・ライミ版ではピーターの恋人だったメリー・ジェーンが連想されます。
ミシェルを演じたゼンデイヤはディズニー・チャンネルにおける人気者で、アメリカのティーンの間ではファッションアイコン的な存在です。こんな人気者が演じた役が今作では出番が少なかった辺り、次回作以降で重要な役になってくるのかも…?
早くも二代目登場の予感…?
バルチャー一味と武器取引をしたために、スパイダーマンから「尋問」を受けることになった黒人男性、アーロン・デイビス。この役を演じているのは人気コメディアン、ドナルド・グローバーです。彼は以前から「スパイダーマンを演じたい!」ということを公言しており、自身が出演しているコメディ・ドラマ内でもスパイダーマンのスーツを着る場面がありました。
今回彼が演じたアーロン・デイビスには原作では甥っ子がおり、名前はマイルズ・モラレス。マイルズは原作の仕切り直しシリーズ『アルティメット』で、戦死したピーターの意志を継いだ黒人による二代目スパイダーマンです。今作の中でもアーロンは「甥っ子がいる」と発言していました。次作以降、彼の甥っ子が二代目スパイダーマンとして登場することになるのか注目です!
サソリの刺青の男・スコーピオン
映画のエンドロールの最中に、収監されたバルチャーとサソリの刺青の男がスパイダーマンについて会話します。このサソリの刺青男の名前はそのままずばり「スコーピオン」。
原作では新聞社に勤めるピーターがあまりにもスパイダーマンの写真を独占して撮影していることに疑問を思う人物で、生体実験によって強力なサソリ男になってスパイダーマンと戦うヴィランです。次作以降の敵として恐らく登場することになるはずです!
次回作には人気キャラが次々参戦!
『アベンジャーズ』シリーズの最新作にはスパイダーマンやこれまでのアベンジャーズメンバーに加え、映画『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー』のメンバーや、ベネディクト・カンバーバッチ演じる『ドクター・ストレンジ』も参戦予定です!『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』は2018年に公開予定です!
映画『スパイダーマン ホームカミング』の個人的総評と感想
良かった点
- アベンジャーズとの関係、学校生活とリズとの恋の行方、新しいスパイダーマンの能力、バルチャーとの対決、次作以降への伏線などなど、詰め込まなければいけない要素が相当あったにも関わらず、どれもテンポ良くまとめ上げていた印象です。
- 最近のヒーロー映画にありがちな暗い雰囲気が全くなく、ギャグ満載の突き抜けて明るい雰囲気にとても好感が持てました。
- 高校の教材にキャプテン・アメリカを出したり、サム・ライミ版の逆さま状態のキスシーンをギャグにしたりなど、全体的にギャグセンスが高かったです。
悪かった点
- 元々そういう奴だとは思っていましたが、トニー・スタークの言っていることには全然賛同出来ませんでした。今作ではピーターにとっての父親的な存在でしたが、彼のそもそものキャラクターと今作の設定が合っていない気がします。
- 今作は完全に職人監督に徹していたため、ジョン・ワッツ監督の作家的な部分は薄かった気がします。彼の前作『コップ・カー』は傑作でしたが、今作はハードルを上げすぎない方が良かったです。
100点満点中80点!
この夏の話題作として堂々たるエンターテインメント作品でした!スパイダーマンの次の登場となる『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』にも期待しましょう!