2017年8月公開予定の話題作『スパイダーマン:ホームカミング』。本格的にマーベル・シネマティック・ユニバースへの参加が決まり一新されるスパイダーマンですが、これまでにも全く異なる作風で、2度のシリーズ製作を経験しています。今回は、そんな過去5作品を、感想を交えながら比較してみたいと思います。
記事の目次
新作に備えて予習!そもそもスパイダーマンってなに?
今や子供から大人まで、日本でも広く認知されているスパイダーマンですが、その歴史が意外と長いことをご存知でしょうか?
スパイダーマンが初めて登場したのが、1961年発売のAmazing Fantasyというコミック誌。そのコミック誌自体は打ち切りとなりましたが、それまでにない斬新なヒーロー・スパイダーマンは絶大な人気を獲得し、以来、現在に至るまでその人気は衰えていません。当時、何がそんなに斬新だったのかと言うと、主人公のピーター・パーカーが10代の高校生だったというところです。それまでのヒーローは成人男性の主人公が多く、10代のキャラクターは彼らの相棒として登場するのが主流でした。そのためスパイダーマンは同世代の若者、そして10代を経験した大人たちからも支持を得てマーベル・コミックを代表するキャラクターの一人となったのです。
スパイダーマンは、普通の高校生ピーター・パーカーが特殊なクモに咬まれたことがきっかけで超人的な能力を手に入れたことにより誕生します。特製スーツに身を包み、科学の知識と身体能力を駆使して犯罪者たちと戦い街の平和を守るスパイダーマン。そんな彼がスクリーンデビューを果たした2002年公開の『スパイダーマン』から、2014年公開の『アメイジング・スパイダーマン2』までの過去5作品を比較してみましょう。
『スパイダーマン』(2002年)
トビー・マグワイヤ演じるスパイダーマンの誕生!
スパイダーマンTM [SPE BEST](出典:Amazon)
スパイダーマン実写映画化の第一作目にあたる今作では、当時注目を集めつつあったトビー・マグワイヤが主役に抜擢されました。彼が演じたピーター・パーカーの「サエない科学オタク高校生」感もいいのですが、そこからスパイダーマンになるまでの変化も自然に表現されていて、ついつい共感を誘われてしまいます。
原作では自作の機械でクモの糸を再現して戦いますが、トビー・マグワイヤ主演の3部作では手首から糸が出るという設定なので、そのイメージが強い方もいるようです。
カルト映画の第一人者サム・ライミ監督によるヒーロー映画!
当時、『死霊のはらわた』などのカルト映画で定評のあったサム・ライミ監督。どういう経緯で彼がスパイダーマン実写化作品の監督になったのかは不明ですが、意外なことに相性が良かったので驚きです。彼の名前が世界的に知られるようになったのも、この作品がきっかけです。
すこし大げさに感じる80年~90年代風の演出や、必ずスクリームを入れ込むホラー的な演出などのサム・ライミ監督らしさも、悪役の脅威を強調させる効果があって逆にマッチしていました。普通の高校生がヒーローになるまでの葛藤も描かれていて良かったです。
『スパイダーマン2』(2004年)
普通の若者とヒーローの間で揺れ動く主人公に共感する!
前作ではピーターがヒーローになるまでの葛藤が描かれましたが、2作目の今作では、その間で揺れ動く心情が描かれています。自分の生活を犠牲にして街の平和を守るピーターでしたが、その影響で恋も勉強も仕事もうまくいかず、心の迷いから能力が使えなくなってしまいます。
一度は引退するものの身近な人や街の人々がスパイダーマンを必要としてることを知り復帰するピーターの姿には、内容は違えど「やるべきこと」と「やりたいこと」の間で揺れ動く経験をしたことがある人は共感すること間違いなしです。
CG技術が向上してもサム・ライミ節は健在!
スパイダーマンとドクター・オクトパスの戦闘シーンなど、前作に比べCG技術がかなり向上していますが、それでもサム・ライミ節は健在です。特に、ドクター・オクトパスの背中に付けられた金属アームが病院で暴走するシーンなどは、「ああ~サム・ライミだな~!」と笑ってしまうほど。
自分の色を残しつつヒーロー映画としてもきちんと成り立たせているあたり、素晴らしいです。前作ありきの2作目ですが、個人的には今作の方が好きでした。
『スパイダーマン3』(2007年)
ヒーローの中にも潜む醜い感情や欲望を徹底して描く!
ヒーローだって人間。誰にでも表と裏があるように、スパイダーマンにも醜い感情や欲望はあります。今作ではそこが徹底して描かれています。ヴェノム(地球外生命体)に寄生されたピーターが自分の欲を満たすために他人を傷つけていく様がしっかりと描かれていて、ヒーローの中にも常にある“悪”を視覚的に体感できます。
そこからの脱却も重要。敵だけでなく自分自身との戦いも描くことで、ヒーローもの3部作の最終章にふさわしいストーリーになっていました。
ラストは必見!2対2の連携バトルが胸アツ
父親を殺したと勘違いされて親友であるハリーに敵意を向けられるピーターでしたが、最後には疑いも晴れて2人で共闘します。2人が立ち向かうのは、体を砂に変化させるサンドマンと、カメラマンに寄生したヴェノムという強敵。この2対2のバトルでのスパイダーマンとハリーの連携がとにかく格好良くて胸アツです。
一度は仲違いした親友が互いの特性を活かしながら協力して戦う姿を見られるだけでも、この3部作を観て良かったと思わせてくれます。
『アメイジング・スパイダーマン』(2012年)
アンドリュー・ガーフィールド演じる新生スパイダーマン!
サム・ライミ監督版の3部作とは別の世界軸で、アンドリュー・ガーフィールド主演によってスパイダーマンがリブート(再起動)されたのですが、こちらはちょっとオシャレな仕上がりになっています。ピーターも、最初こそいじめられていたものの調子に乗るのが意外と早く、トビー・マグワイヤ版に比べると結構イケイケです。
戦い方も前シリーズに比べてスピード感が若干増し、スタイリッシュになっています。スーツも新しくなり、糸も手首からは出ずに自作の機械を装着するスタイル。正直、スパイダーマンの造形ではこちらの方が好きです。
MVの名手マーク・ウェブ監督の映像美に圧倒される!
新シリーズでメガホンを取ったマーク・ウェブ監督は、多くのミュージックビデオを撮ってきたことで有名です。短い映像でイメージを伝える経験が豊富なため、今作の中でも短いシークエンスでインパクトを与える演出や表現が多く、特にその映像美には感動します。
サム・ライミ監督版も良かったですが、スパイダーマンが街を縦横無尽に飛び回る姿は今作も負けていません。
『アメイジング・スパイダーマン2』(2014年)
新たな敵の出現により映像もさらに進化!
今作の敵は電気人間・エレクトロと、前シリーズにも登場したグリーン・ゴブリン。このエレクトロの出現により、映像はさらに進化しています。
エレクトロは電気を使って戦うのですが、その光の表現が恐ろしい印象を与える一方で美しくもあり、劇場で観た方は圧倒されたはずです。特に、NYの街中で暴れるシーンは背景とマッチしていて最高です。スパイダーマンとの戦いもスピード感があり、一時も目が離せません。
意外な展開に驚かされ謎も残っていたのに続編がないのが残念!
「そう来るか!」という意外な展開に驚かされ、まだ謎も残っていたこのシリーズですが、続編が製作されないまま幕を下ろしました。3作目の企画自体は挙がっていたものの、マーベル・シネマティック・ユニバースに統合されることになり、3度目のリブートが決定したのです。
マーク・ウェブ監督のスパイダーマンを観られないのは残念ですが、新たに始動するシリーズもかなり期待できそうなので、気持ちを切り替えて楽しみにしたいと思います。
待望の新作!『スパイダーマン:ホームカミング』はどうなる?
2017年8月公開予定の『スパイダーマン:ホームカミング』では、ピーター・パーカーが歴代の中でも最もお調子者で子供っぽく描かれています。アベンジャーズへの本格的な仲間入りを目指していて、スーツもアイアンマンことトニー・スタークが開発したもの。これまでになかった機能が色々と出てきそうです。そして悪役には、これまでのシリーズにも登場したことのなかったヴァルチャーが登場。
これまでのシリーズは独立した世界軸で物語が展開していましたが、今作からはスパイダーマンがマーベル・シネマティック・ユニバースの一部となり、『アベンジャーズ』メンバーの他の作品とクロスオーバーした新たなストーリー軸で展開していきます。
友情や恋愛も描かれているようで、少年がヒーローになるために行動する青春ムービーとしても楽しめそう。ぜひ、劇場で新スパイダーマンの勇姿をご確認ください!