アニメ放映が始まってから「イケメン」「クールキャラ」として人気上昇中の『僕のヒーローアカデミア』轟焦凍。彼が抱える家族、特に父親との確執は深いものではありますが彼なりにそれを乗り越えようと奮闘するシーンは惹かれるものがあります。彼はどのようにそれらを乗り越えていくのか、独自に考察してみました。
イケメン!と人気沸騰中・轟焦凍
轟焦凍の個性は「半冷半燃」
轟焦凍は1月11日生まれ、緑谷出久や爆豪らと同じ雄英高校の1年A組に在籍しています。彼は通常の生徒らとは違い、特待生として推薦入学してきました。彼の個性は「半冷半燃」、字面の通り、右手からは冷気が、左手からは炎(熱)を発することができます。
冷気の方は競技場の上部まで届くほどの巨大な氷の柱ができるほどの威力で、これだけでも圧倒的なのに体育祭後は炎のほうもほとんど迷いなく使用していますから、一部のファンの間では「チート」とも言われるほど。出久との一戦では本気の轟の一撃にセメントスの「仲裁」が入ったほど凄まじいものでした。
アニメで轟焦凍を演じるのは声優の梶裕貴
アニメで轟焦凍を演じるのは声優の梶裕貴です。梶は9月3日生まれ、アニメ声優としてのデビューは2006年の『ふしぎ星の☆ふたご姫』でした。その後『イナズマイレブン』シリーズの不動明王役や『進撃の巨人』エレン・イェーガー役、『四月は君の嘘』の相座武士役、『DIVE!!』の坂井知季役など多数の作品で主役・主要キャラを演じています。
轟焦凍を演じる際、梶が最も楽しみにし、集中して臨んだのはやはり「オリジン回」だったそうです。原作を読んだ時からこのエピソードは好きで、1期の頃からここを意識して「轟焦凍」というキャラを演じていたそう。轟がここで一つ壁を乗り越えたかと思いきや、まだどこか完全に消化しきれない気持ちを梶自身も共に感じている、といったところや、今後も作品内で彼と一緒に成長していくのだと思う、と語っていたところがとても印象的でした。
原作でも元々人気の高いキャラでしたがアニメが始まるとさらに「イケメン」「かっこいい」と話題になり、オリジン回で彼に心を奪われた人はかなりいると思われます。
轟焦凍の複雑すぎる家庭環境
父はエンデヴァー あまりにスパルタすぎる幼少時代
轟の父親はNo.2ヒーローのエンデヴァー(轟炎司)です。彼はずっとNo.1ヒーローであるオールマイトを越えることができず、悔しい思いをしていましたが自分で越えられないことを悟るやいなや自分の子供にその夢(野望)を託そうとするのです。その結果焦凍に「お前にはオールマイトを越える義務がある」と勝手に押しつけた上、まだ幼少のころからスパルタ的に彼を指導していきます。
そんな父親に反抗心を抱き、父親側の個性を使わないで勝つことで父親を完全否定してやる、と考えていた焦凍が、出久との一戦で「これだって自分の個性」「俺だってヒーローになりたい」と気持ちを再確認することでようやく炎のほうを解禁するに至るわけですが、それで喜びを爆発させたエンデヴァーはプレゼントマイクから「親バカ」と言われるほど。
でもこのときのエンデヴァーの気持ちとしては、単純に、子供の成長を喜ぶ1人の親になっていたと思います。それから、「俺の力を受け入れたか」ではなく、「己を受け入れたか!」と言っているので、これは突き詰めれば出久の言う「君の力じゃないか!」に通じるものもあると思っています。彼なりに子に愛情は注いでいるのではないでしょうか。
母は個性のみで選ばれ、エンデヴァーと個性婚
この世界では個性のみで相手を選んで結婚する「個性婚」なんていうものがあって、焦凍の母親はそのためにエンデヴァーに選ばれ、焦凍を産みました。それでも母は我が子である焦凍を愛し、大事にしていたと思います。時にはエンデヴァーのスパルタともいえる特訓からかばったりする描写もありました。そのせいで母はエンデヴァーから暴力をふるわれてしまい、次第に精神を病んでいくことに。そしてとうとうその矛先は焦凍に向けられることになってしまうわけです。
母の気持ちになってみれば個性のみで選ばれて結婚させられただけでも相当辛かったことと思いますが、その相手の男からひどい仕打ちを日常的に受けていたとなればどんなに強い人であっても平気でいられるはずもないと思います。焦凍が自分に熱湯をかけた母親を恨まず、結果的に母親をそこまで追いつめた父親を憎むようになったのも、なかなか興味深いと思いました。
焦凍はもしかしたら自分が幼い頃からエンデヴァーの期待に応えられるような子どもであったなら、母親がこんなことになることもなかったかもしれない、と、どこかで思っていたのかもしれません。
轟焦凍 オリジン回以降の心境の変化
職業体験の場として父エンデヴァーの事務所を選んだ理由は?
体育祭を経て行われた職業体験の場として、焦凍はたくさんきていたオファーの中から父親・エンデヴァーの事務所を選びました。あれだけ忌み嫌っていた父親の事務所を、わざわざ選んだのはなぜなのでしょうか。理由の一つは焦凍自身も語っていましたが「どんだけクズでも NO.2と言われるだけの判断力と勘の良さは認めざるを得なかった」から。
でもそう割り切れるようになったのは体育祭での出久との戦いで彼に言われた「君の力じゃないか!」が大きく影響していると思います。自分がさらに強くなり、「ヒーロー」と呼ばれる存在になるためには、父親の存在をも乗り越えなければならない、そう気づいたのでしょう。そのために、回りくどいことはせず、ストレートに父親のもとで学ぶ、そしてさらには父親そのもの、父親を憎む気持ちも乗り越えようと思ったんだと思います。
母の入院先を訪れることを決心した理由は?
焦凍が母に会いに行けなかったのは自分を見ることで母の心をまた乱してしまうから、という思いからだったと思います。それが体育祭のあと母に会おう、会って話したいと思ったのはなぜか、もちろん出久との一戦で色々自分の中で吹っ切れることができたから、も理由の一つではあると思いますが、「もう逃げない」という思いがあったからかなと思います。結局、父親にしても母親にしても、あちら側が彼を捉えていたのではなく、彼が「勝手に捉われていた」というのもあると思うので、それをまず自ら断ち切ることで前に進もうと思ったのでしょう。
母にしても、あれからずっとずっと、後悔し続けていたと思うのです。もちろん自分から行くわけにいきませんから、焦凍のほうから一歩踏み出してくれたのはとても嬉しかったでしょうね。
それから、焦凍が母親に会いに行く描写があったのは体育祭の振り替え休日の日でしたが、その後も何度か通い、会わなかったあいだの溝を少しずつ埋めていってるんだろうなと思います。そして、父親の事務所に入ると決めたことも話したに違いありません。やはり彼にとっては母>父だと思いますから。
自分と向き合うことが出来た轟焦凍はもはや最強!?
ただし彼にも弱点はある
右で凍らし、左で燃やす、これを躊躇いなく発揮し始めた焦凍はもはや最強なんじゃないか…とも思えますが実際のところはどうなのでしょう。体育祭の時に相澤先生が「個性が強力すぎるから動きが大雑把」と見抜いていました。近距離に入ってこられるような戦闘スタイルはあまり得意でないように見えます。もちろん、元々の能力の高い焦凍のことですからこの弱点克服も近いうちにしてしまうかもしれません。
それからもう一点、仮免許取得の際の夜嵐イナサとの絡みでわかったことですがどうやら焦凍はまだ父親とのあれこれを完全には乗り越えていないようなところを感じさせました。
もちろん5歳くらいから15歳まで、約10年にもわたる確執をそう簡単に乗り越えられるものでもありませんが、父親のことを持ち出されるとイラっときてしまい、さらにそれを上手に抑え込むことができずに冷静さを欠き、ちゃんとした判断ができなくなってしまう、というのは、ヒーローとしてはまだまだ、と言えるでしょう。
バトル以外では意外と天然なところも
轟焦凍はバトルセンスもありますし頭も良い、いわゆる「クール」「かっこいい」キャラとして作中ではもちろん、読者・視聴者の間でも通っていますが、時々みせるズレた発言やあまりに周囲の人間に興味がなさそうなところが「もしかして天然?」と最近話題になっています。
その一つが期末試験のときに組んでいた八百万百が色々感極まって涙ぐむシーンで「どうした?気持ち悪いか、吐き気には足の甲にあるツボが」と見当違いの発言をしたところなのですが、思えば体育祭の決勝前に爆豪が控室を間違えて入ってきて逆ギレに近い言動をとっても(考え事をしていたとはいえ)全く無反応だったりと、天然というよりは「他人にあまり興味がない」のかなと思わせる部分は多いです。
彼は天才ゆえ、これまで他人を気にする必要も気にかける必要もなかったのだと思います。でもそんな彼も出久たちと出会って関わるようになったことで、出久や飯田のピンチに駈けつけたり、ちょっとずつではありますが「友達」と意識するようになってきたことは大きな成長といえるでしょう。
彼が家族のことなど全て乗り越えて弱点を克服してきたときには、間違いなくトップヒーローの仲間入りをするのだろうなと思います。今後も楽しみなキャラですね。