絵が上手いだけじゃない!画力のスゴい漫画家9人を本気で選んでみた【2017年版】





単に絵が上手いのではなく、「画力」――読んで字のごとく「画(え)」の「力」で魅せる漫画家を、本気で選んでみました! 漫画という音のない平面の世界に読者を引き込むには、説得力と生命力のある絵が不可欠です。2017年現在、その力が抜きんでている漫画家はこちら!(※個人的な好みも入っています)

太田垣康男|人間もメカも宇宙も圧巻の迫力!


機動戦士ガンダム サンダーボルト(7)(出典:Amazon)

太田垣康男(おおたがき やすお)公式Twitter
1967年3月31日生まれ
出身:大阪府
代表作:『MOONLIGHT MILE』『機動戦士ガンダム サンダーボルト』

巨大ロボット物をコミカライズするにあたって、彼以上の適任はいないでしょう。漫画は紙面の大きさにどうしても限りがあり、コマを割って物語を表現するためにどうしても巨大なものをそう見えるように描くのは難しい媒体ですが、太田垣の画力はそれを実現します。彼の描くロボットは確かな質量をもって大きく、宇宙は生きているように濃密な漆黒です。

また大きさと広さの表現が達者ということは空間や立体の認識が優れているということなのか、彼の描くキャラクターも洋画のようにリアルかつ個性的。そんな彼の画力を堪能するのに最適なのが現在連載中の『機動戦士ガンダム サンダーボルト』です。アニメの高評価も、太田垣の表現力にガンダムのプロたちが応えたからではないでしょうか。個人的には、ガンダムシリーズ中唯一手塚治虫の匂いのするガンダムとして非常に気に入っています。大人の鑑賞に堪えうる傑作です。

野田サトル|何を描いても上手い変顔達人


出典:週刊ヤングジャンプ編集部公式Twitter

野田サトル(のだ サトル)公式Twitter公式ブログ
出身:北海道北広島市
代表作:『スピナマラダ!』『ゴールデンカムイ』

漫画好きの間で大人気の代表作『ゴールデンカムイ』。バトルあり料理あり変態あり変顔ありの時代もので読者を楽しませることができるのは、何でも描ける画力あってこそ。時代考証に則った武器や戦法、アイヌ文化についての描写も興味を引きますが、おそらく現在この作品以上に食欲をそそる漫画もないのでは。しかし作者はグルメ漫画が苦手だったというから驚きです。

また漫画であるからには、キャラクターの愛おしさはヒットの絶対条件であり、『ゴールデンカムイ』も例外ではありません。中でもヒロインたる美少女アシリパが見せる変顔のバリエーショの豊かさたるや。どんな男前や変態たちも、彼女の顔芸以上のインパクトはありませんよね? さらに乙女な男子や脳みそを食べるときの死んだ目なども秀逸。表情描写でキャラの魅力を引き出すのも彼の画の力です。

ところで写真のトレスにしか見えないリアルな背景は、一体どうやって描いているのか気になります!

坂本眞一|もっとも芸術に近い漫画家


イノサン Rouge ルージュ 3(出典:Amazon)

坂本眞一(さかもと しんいち)公式Twitter
1972年7月19日生まれ
出身:大阪府
代表作:『孤高の人』『イノサン』

研ぎ澄まされた描線でリアルに形作られる世界は美しく、芸術作品といって差し支えないでしょう。企画展「ルーヴルNo.9」への出展も、この人でなければいったい誰が!? というほどに妥当。上手いうえにいかにもフランス人好みの画風です。

しかし絵の上手さや芸術性を、テーマ性や漫画表現に生かしてこそ漫画家。坂本眞一はおそらく現在その類の漫画家のトップです。『イノサン』シリーズで描かれる王政フランスの処刑人の生き方や時代の大きなうねりは、彼の画力で描くにふさわしい題材。残酷も欲望も美しさも、緻密なタッチがあらわにします。特に物語の軸となる兄と妹の人生を対比するのに、アールヌーヴォー的な描写を多用するのが芸術的かつ効果的だと思うのですがいかがでしょうか。

しかし一部の隙もないような完璧な原稿を仕上げる人なので、できることならラフ画集を出してほしいと思うのは贅沢?

平田弘史|御年80歳記念の原画展で見せつける侍魂


血だるま剣法・おのれらに告ぐ(出典:Amazon)

平田弘史(ひらた ひろし)公式サイト
1937年2月9日生まれ
出身:東京都
代表作:『弓道士魂』『血だるま剣法・おのれらに告ぐ』

昭和33年のデビュー以降、1作を除いて時代劇画を描き続けてきた漫画家。時代と体制に翻弄されつつも抵抗する武士を好んで題材にし、貸本時代の若者たちから海外のマニアまで多くの人間を釘づけにしてきました。荒々しいタッチと緻密な描き込みを自在に操る彼の原稿は、魂のこもった芸術品です。漫画家にも平田ファンは多く、2017年開催の原画展には大友克洋や池上遼一、寺田克也らそうそうたる面々がお祝いコメントを寄せました。

ここ何年も漫画を描いていない彼を挙げるのは若干気が引けますが、生誕80周年・画業60年の節目を記念する原画展に足を運んだ人ならば、改めてその画力にうならされたのではないでしょうか。平田弘史以上の迫力ある絵を描ける漫画家は、やはり依然他には見当たらないのです。しかもまるで画力が衰えないのも凄い!

ちなみに書家としても評価されていて、『AKIRA』や『シグルイ』などのタイトル文字を担当しています。あなたも知らないうちに目にしているかも?

平本アキラ|遊びすぎ!漫画界の愉快犯


平本アキラ画集 GAMPUKU 眼福(出典:Amazon)

平本アキラ(ひらもと アキラ)
1976年生まれ
出身:沖縄県
代表作:『アゴなしゲンとオレ物語』『監獄学園』

ネームのセンスやノリノリのテンポとともに、画力も笑いの武器にしているタイプのギャグマンガ家。前作『アゴなしゲン』時代から、あえてツッコミどころをスルーして読者にツッコませるというレベルの高い笑いを提供してきた名手ですが、現在連載中の『監獄学園』では画力の進化によってその精度をさらに高めています。

見上げる人のあごから首にかけてのラインが“アレ”に見えるなんて、まずそんな発想が天才的だし作画への力の入れようが天晴。描いたことのある人ならわかるでしょうが、あれは漫画的に描くには何気に難しいアングルですよ! 画力アップによってエロさだけでなくギャグのキレを増すという、ギャグマンガ魂には感服します。ところで男より女の子の作画がリアルになっていくのが、いかにもヤンマガ作家らしい上達の仕方だな~と思うのは私だけ?

原泰久|キャラのエネルギーは“目力”に!


キングダム 46(出典:Amazon)

原泰久(はら やすひさ)公式Twitter
1975年6月9日生まれ
出身:佐賀県三養基郡基山町
代表作:『キングダム』

初連載の『キングダム』は古代中国という馴染みのない題材に反して大当たりし、現在もその人気はとどまるところを知りません。おそらくその人気の秘密は、キャラクターの魅力と合戦の熱さにあります。そしてそれを表現するのに、作者・原泰久の“画”の力が大きなファクターとなっているのです。

原の描くキャラクターの説得力は、目にあります。バカだけど曲がったことが嫌いな信も、戦争中に「人は光だ」と理想論を説く政も、その目を見れば彼らの正義は疑いようがありません。他のキャラクターも同様で、合戦中のモブに至るまでそれぞれの魂が目に宿っています。そんな彼らがぶつかり合うからこそ、合戦が熱いのですね!

個人的にこの人のキャラクターの描き分けが井上雄彦に似てるな~と思っていたら、どうやら元アシスタントらしいですね。

漫画『キングダム』で一番強いのは!?最強ランキングTOP20男編!

2017-05-25

黒澤R |クリックしてしまうエロ漫画バナーNo.1


先生ごめんなさい : 1(出典:Amazon)

黒澤R(くろさわ アール)公式Twitter
代表作:『相姦の赤い河岸』『復讐の未亡人』

背徳性のあるエロ漫画を発表し続ける女性漫画家。グランドジャンプの『妻シリーズ』など、いくつもの連載をかけ持つ隠れた売れっ子です。羽海野チカの元アシスタント。

ここ数年でぐんと知名度を上げましたが、おそらくその理由は電子書籍のバナー広告です。黒澤Rの絵はカラーだろうとモノクロだろうと、とにかく人の目を惹きつけます。何より女の子がセクシーなのに清楚でかわいい! この子が一体どんなエッチな目に…?と、気になってついついバナーをクリックした人は多いのではないでしょうか。そうして試し読みに手を出せば、ヒロインの魅力と背徳的な恋愛にズブズブにハマってしまうのです。

絵の上手いエロ漫画家にありがちな未完作品の多さが気になりますが、興味を持った方はオムニバスの『金魚妻』や一旦オチのついた『復讐の未亡人』から試すのがおすすめ。エロ度は保証します。

九井諒子|星新一の世界のようなシンプルな自由さ


ひきだしにテラリウム(出典:Amazon)

九井諒子(くい りょうこ)
代表作:『ダンジョン飯』『ひきだしにテラリウム』

同人誌出身の漫画家で、主な作品発表の場はエンターブレイン発行のサブカル漫画誌。強烈な個性のぶつかり合うサブカルジャンルで、ひとり飄々とマイペースに描線を紡いでいるのが久井諒子です。彼女の存在はいうなれば漫画界の星新一かも。

「このマンガがすごい!」男編1位を獲得した『ダンジョン飯』でも豊かな発想を形にする画力は知られていますが、彼女の実力を堪能するには、『ひきだしにテラリウム』がおすすめ。ほんの数ページの掌編が33話収録された短編集で、物語のコンセプトに合わせて様々な絵柄が使い分けられているのが見どころです。また概ねシンプルな画風ながら、1コマに十分な情報量をはめ込んでいるわかりやすさも見事。何の気なしにさらっと読めて、かつ見れば見るほど味のある世界をご覧あれ。

山本亜季|これはやばい!大注目の大型新人


HUMANITAS ヒューマニタス(出典:Amazon)

山本 亜季(やまもと あき)公式Twitter
代表作:『HUMANITAS』

新人賞受賞作『HUMANITAS』がそのままデビュー連載となり、単行本全1巻が発行されたばかりの新人漫画家。デビュー作は骨太の作品が並ぶ『週刊ビッグコミックスペリオール』誌において、他作品に遜色ない存在感を持った意欲作でした。生きるために戦うことを追求する物語もさることながら、生命力にあふれた作画も実力充分。初コミックスの表紙の少年のオーラに惹かれた人ならば、これは買いです! 次回作が楽しみな大型新人・山本亜季を、今から追いかけておいて損はありません!

デビューから間もないため全く情報がありませんが、Twitterアカウントの0623は誕生日なのでしょうか…。