シャマラン監督の新たな傑作!映画『スプリット』をネタバレ考察





映画『シックス・センス』などで知られるM・ナイト・シャマラン監督の最新作『スプリット』が公開されました!今回はこの『スプリット』をシャマラン監督作品の特徴と共に考察していきます。以後ネタバレを含みますので、鑑賞後に読んで頂くことをお勧めします。

シャマラン監督の作家性とは?

『シックス・センス』からの「大どんでん返し」のイメージ


出典:映画『スプリット』公式Twitter

第89回アカデミー賞で作品賞発表の際、作品名を間違えるという前代未聞のハプニングが起こりましたが、これに関連して話題になったツイートがありました。

「私が2017年のアカデミー賞のエンディングの脚本を書いたんだ」。

このツイートをしたのはM・ナイト・シャマラン。彼は今回紹介する映画『スプリット』の監督ですが、大ヒット映画『シックス・センス』のようにラストに衝撃的なオチがあるという、いわゆる「大どんでん返し映画」の監督として一般的に認知されています。上記のツイートは自身のイメージを使ったジョークだったのですが、このイメージによって彼は世間一般から若干過小評価されてしまっているのも事実です。

描くのは常に「本当の自分と向き合う人々」のストーリー

しかし、彼の映画の醍醐味は「大どんでん返し」のラストだけではありません。彼が常に描いているのは「本当の自分と向き合う人々」のストーリーです。

『シックス・センス』はある人物が本当は幽霊だった、というのがオチとしてありますが、これもその人物が本当の自分と向き合った結果です。『アンブレイカブル』も自身が不死身のヒーローであることに気づいた男のストーリーですし、前作の『ヴィジット』では姉弟がラストで自分達のトラウマと向き合います。

シャマラン映画の特徴をまとめるとするならば「主人公が何か超常的な体験を通して本来の自分に気づく映画」と言うことが出来るでしょう。彼の映画はこのような一貫したテーマが先にあり、結果として「大どんでん返し」的な映画になってしまうのです。

多重人格VSトラウマを抱えた少女

ケビンにおける「本来の自分」とは?


出典:映画『スプリット』公式Twitter

上記のシャマラン映画の特徴に沿って、『スプリット』を読み解いてみましょう。ケビンは過去の虐待の結果、解離性同一性障害(多重人格)を患います。そして様々な人格を形成し、それぞれの人格によって様々な能力を開花させます。最終的には24人目の「ビースト」という恐ろしい存在にまで進化していきますが、この存在こそケビンにとっての「本来の自分」と言えることが出来ます。

「ビースト」は「母親に虐待された弱い自分」というケビンの過去のトラウマと対になる存在です。それゆえ筋骨隆々の怪物的な肉体を持ち、女性ばかりを殺害します。

ケイシーの悲惨な過去

本来の自分と向き合うのはケビンだけではありません。ケビンに誘拐されるケイシーは監禁中、自身の過去を振り返ります。彼女は幼少期に父親と叔父との3人で行った鹿狩りの最中、叔父から性的虐待を受けます。そして父親が早死した後は、この叔父が彼女の保護者となり、それ以後も恐らく虐待は続いていることが示されます。

彼女はこの監禁事件をこれまでの虐待の経験と重ね合わせ、どうにか逃げ出そうとするも、彼女の脱出計画はことごとく失敗していきます。

トラウマと向かい合うケイシー

ケイシーは最初の性的虐待の後、叔父にライフル銃を向けたことを思い出します。あの時、引き金を引く勇気があれば、以後の苦しみは無かったのに、と彼女は後悔しているのです。このように彼女が勇気を出せない状況は、映画の冒頭、誘拐されかける場面で逃げることが出来たかもしれないのに車のドアを開けることをためらった様子とも重なります。

男性からの支配に打ち勝つための勇気が出せないケイシーでしたが、映画のラストで自身のトラウマと向き合うことになります。ライフル銃を手に入れたケイシーは、男性性の象徴ともなったビーストに追いかけられ、逃げ場のない檻の中に逃げ込みます。そして、追いかけてきたビーストを自身の悲惨な過去と重ね合わせ、それらを消し去るが如くビーストに対してライフル銃の引き金を引くのです。

傷ついた者同士の初めての共感

ケイシーの放った弾丸はビーストに命中するも、ビーストを殺すことは出来ません。それどころか彼女の入っている檻を力ずくで捻じ開けようとします。しかし、ビーストはケイシーの体中に無数の傷跡を見つけます。

これは彼女が叔父から受けている虐待によるものであり、彼女もケビン同様に過酷な経験をしていることにビーストは気付きます。ケイシーのことを自分と同じ魂の持ち主だと認め、ビーストは去っていきます。2人はお互いにとって自身の過酷な境遇を曝け出し共感することが出来る初めての相手だったのです。

ビーストが去り、施設の職員に救出されたケイシーは、パトカーの後部座席に乗せられます。そこへ女性警官がやって来て、叔父が迎えに来ていることを告げるのですが、ケイシーはその女性警官を見つめ続けます。ケイシーのその後は映画には出てきませんが、自身のトラウマに立ち向かうことができた彼女は、叔父に立ち向かうために女性警官に自身が虐待されていることを伝えた、と考えられます。