毎年数多くの映画が公開されている反面、そのスピードにアイデアが追いつかず、また興行的な保険のために定型ストーリーが量産される昨今。結末が分かってしまい鑑賞途中で冷めてしまうこともしばしば・・・。今回は、そんな作品たちの中に紛れている、予測不能な結末が待つ傑作SF映画をご紹介します。
記事の目次
ザ・フライ(1987年)
天才科学者セスは、物質転送装置「テレポッド」を開発するが、有機物では失敗が続いていた。ある日、記者ヴェロニカの助言をもとに改良を重ねたセスは有機物での実験に成功し、あろうことか自分自身の体を使って転送を行う。しかし、その転送中に紛れ込んだ一匹のハエと遺伝子レベルで融合してしまったことを彼は知ってしまい・・・。
まず、これを30年前に作ったという事実に驚きます。デヴィット・クローネンバーグ監督節を炸裂させながら、ビジュアル面でも心理面でも、ハエ化していく男をしっかりと描いています。この結末に関しては、感想さえもネタバレになるので触れません。ぜひその目で確かめてください。
バタフライ・エフェクト(2005年)
バタフライ・エフェクト プレミアム・エディション [DVD](出典:Amazon)
少年時代に短時間だけ記憶を失うという経験が何度かあったエヴァンは、当時書いた日記を読み返すことによって、かつて記憶を失った時点に戻り過去を変えられることを知る。幼馴染のケイリーを救うために何度も過去を変えるエヴァンだったが、変えるたびに他の誰かが不幸になることを知り・・・。
カオス理論の一つであるバタフライ効果(ここで語るには複雑な内容なので詳しくはお調べください・・・)を題材にした今作。実はDVDには何パターンかの結末が収録されていますが、やはり公開版のオリジナルエンディングが一番胸に響きます。
第9地区(2010年)
第9地区 (初回限定生産) [Blu-ray](出典:Amazon)
宇宙船の故障により帰郷できなくなったエイリアンたちを難民として受け入れた南アフリカ共和国。専門機関MNUは隔離地区「第9地区」を用意するが、時が経つにつれエイリアンの犯罪行為や人間による差別意識が顕著に現れ始める。MNUの職員ヴィカスは、エイリアン専用の第10地区へ移住させる計画に参加するが、立ち退き要請のために訪れたエイリアンの自宅で謎の液体を浴びてしまい・・・。
難民問題をエイリアンに置き換えるというアイデアや、甲殻類をモチーフにしたエイリアンの造形もさることながら、主人公が迎えるラストの展開に驚かされます。なるほどそう来るか、と。胸にジーンと響く場面もあり、結末を知った後でも何度か観返したくなる作品です。
月に囚われた男(2010年)
月に囚(とら)われた男 [SPE BEST] [Blu-ray](出典:Amazon)
エネルギーが枯渇した近未来。新たなエネルギー源確保のために月面での採掘任務に単身で取り掛かるサムは、3年の任務期間を終えようとしていた。ある日、作業中に事故を起こしてしまったサムは一命をとりとめるが、誰もいないはずの月面上で“ある人物”と遭遇して・・・。
通常であればラストまで温存しておきたい展開が早めに訪れますが、今作の見所はその後の主人公の行動にあります。知るはずのなかった事実を知った時にとる人間(?)の行動を通して、心理描写というテクニックで予測できない結末を見せてくれます。
ミッション:8ミニッツ(2011年)
ミッション:8ミニッツ [Blu-ray](出典:Amazon)
ある理由から、アメリカ軍の極秘ミッションに強制的に参加させられた陸軍大尉のコルター。その内容は、既に起こっている爆破事件の被害者の意識に入り、爆破が起こるまでの8分間で犯人を捜し出すというものだった・・・。
鑑賞後に暗い気持ちになることで有名な『ジョニーは戦場へ行った』を彷彿とさせる設定がある今作ですが、エンタメ性の高いサスペンスとして楽しむことができます。同じ8分間を繰り返すにも関わらず、物語が進むにつれ複雑になっていくストーリー展開はまさに予測不能。この結末をハッピーエンドと捉えるかバッドエンドと捉えるか、それはあなた次第です。
インターステラー(2014年)
食糧難や異常気象により人類滅亡の危機に直面している近未来。元エンジニアのクーパーは、秘密裏に活動を続けるNASAのメンバーと共に、移住可能な惑星を見つけるためのミッションに参加することになる。反対する娘のマーフに必ず帰ることを約束して地球をあとにするクーパー。しかし、そんな彼を待ち受けていたのは親子を引き裂く過酷な運命だった・・・。
殺伐とした風景と無機質な宇宙空間が物語のほとんどを占めているのに、こんなにも興奮して、こんなにも温かい気持ちになるSF映画は観たことがありません。最初に提示された謎も結末に向かうにつれドンドン解き明かされていき、実際は長い上映時間もあっという間に感じます。
プリデスティネーション(2015年)
プリデスティネーション [Blu-ray](出典:Amazon)
1970年、ニューヨーク。とあるバーに訪れたジョンは、意気投合したバーテンダーと話すうちに、彼が自分を勧誘するために近づいてきた組織のエージェントだと知る。爆弾魔を捕まえるためにタイムトラベルをするバーテンダーに連れられ1963年へ向かったジョンは、自分の人生を狂わせた男への報復を考えるが・・・。
たくさんの「?」が置き去りにされながらも、そんなことが気にならないくらいのストーリー構成で魅せてくれ、最後まで集中力が途切れることはありません。そして、そのたくさんの「?」が回収され全てがつながった時、これまで経験したことのない感情に襲われます。みなさん、鳥肌のご用意を。
エクス・マキナ(2016年)
エクス・マキナ ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray](出典:Amazon)
IT企業に勤めるプログラマーのケレイブは、社長であるネイサンの自宅に訪問できる権利を獲得する。容易に足を踏み入れられない山岳地帯にあるネイサンの自宅に訪れたケレイブは、ネイサンが開発した女性型アンドロイドのエヴァと出会う。彼が行っている開発の暗部に気づきながらも、ケレイブはエヴァに惹かれていき・・・。
全編を通して不穏な空気が漂う中、密室で繰り広げられる人間と人工知能の心理合戦。と見せかけて、物語が静かに一転二転していき、終着点が読めなくなっていきます。「近い未来、本当にこんなことになるんじゃないか?」と思わせる独特な説得力があります。
10 クローバーフィールド・レーン(2016年)
10 クローバーフィールド・レーン [Blu-ray](出典:Amazon)
婚約者との仲違いが原因で家を飛び出したミシェルは、運転中に追突事故に遭い気を失ってしまう。目を覚まし、自分が地下室に監禁されていることに気づいたミシェルは、自分を監禁したハワードという男から信じがたい事実を突きつけられる。それは、何者かの攻撃によって外気が汚染され、外には出られないというものだった・・・。
映画ファンの間で評価の高い『クローバーフィールド/HAKAISHA』の事実上の続編ですが、物語自体には繋がりがないため単体作品として楽しめます。襲来モノのSF映画なのに、ほとんどが密室での人間の心理戦という異色の作品。この結末、続きが気になります。
パラドクス(2016年)
刑事に追われる犯罪者の兄弟は、ビルの非常階段から逃げようとするが、外に出られないその非常階段が無限に続いていることに気づく。一方、車で旅行に出かけた一家4人は、ある地点から何度も同じ道を通っていることに気づく。やがて、何のかかわりもない2つの不可解な出来事が繋がっていき・・・。
途中まで「選ぶ映画間違えたな。失敗したな。」と思うくらい、低速で難解な展開が続きますが、ご安心ください。物語が進むにつれ徐々に加速していき、最後にはニヤつきが止まらないくらいの満足感を得られます。業が深いって、こういうことを言うのかも。
見所は結末だけではない
今回ご紹介したのは「予測不能な結末」の映画ですが、見所はその結末だけではありません。結末に向かうまでの伏線やキャラクターの描き方やストーリー構成など、それら全てがあることによって結末がより際立っています。
結末を楽しみにしながら、ぜひ作品そのものもお楽しみください。映画がもっと好きになることをお約束します。