徹底検証!マンガ大賞2017受賞作『響~小説家になる方法~』は面白くない!?





出版社のしがらみにとらわれず、ホントに面白い作品が選ばれると毎年話題のマンガ大賞。今年は、数々の話題作をおさえて『ビッグコミックスペリオール』で連載中の柳本光晴による『響~小説家になる方法~』が大賞受賞!でも、Twitter上には「面白くない」との声も…!? 果たして『響』は面白いのか、面白くないのか検証してみました。

漫画『響~小説家になる方法~』とは?


出典:響公式Twitter

まずは、漫画『響~小説家になる方法~』とはいったい誰が描いたもので、どんな内容の漫画なのかをおさえておきましょう。

漫画『響~小説家になる方法~』を描いたのはほぼほぼ新人漫画家!

『響~小説家になる方法~』は、2014年から小学館『ビッグコミックスぺリール』にて連載されている漫画で、作者は柳本光晴。柳本は、同人誌出身の漫画家であり、短期連載集中作品『女の子が死ぬ話』で有名ですが、本格的な連載漫画は本作が初。

しかし、その才能に惚れ込んだ小学館『ビッグコミックスペリオール』の編集担当者が、口説き落として『響~小説家になる方法~』の連載が開始されることになったのだそう。

漫画『響~小説家になる方法~』の内容は?

気になる内容ですが、一言でいうと「文学界に彗星のごとく登場した圧倒的な天才」を描いた作品。主人公の響は高校1年生ですが、他の誰にも真似できない、それこそ数十年に一人というレベルの文才を持つという設定です。

そんな響は、天才ゆえに…なのか、周囲に同調することなく、長いものに巻かれることなど決してなく、自分なりの尺度を持ち、周囲と関わっていきます。その姿は私たちの目に、ある時は狂気に映り、ある時は痛快に映ります。

2017マンガ大賞を獲る!

『響~小説家になる方法~』は、2017年4月現在6巻まで刊行されています。マンガ大賞にノミネートされた時点では5巻まで刊行されていました。その他にノミネートされていたのは、東村アキコ『東京タラレバ娘』、九井 諒子『ダンジョン飯』、小林有吾『アオアシ』、沙村広明『波よ聞いてくれ』など計13作品。有力作品が多数ある中、受賞したのは『響~小説家になる方法~』でした。

2017マンガ大賞を獲った『響』みんなの反応は?


響~小説家になる方法~ 1 (出典:Amazon)

マンガ大賞は、「友達に勧めたくなる漫画を選ぶこと」をコンセプトとしており、そこには出版社の変なしがらみや大人の思惑が絡まず、読者にとって「本当におもしろい漫画」を大賞に選ぶことから、注目度の高い漫画賞。筆者も毎年、かなり楽しみに結果を待っているクチで、ノミネート作もなるべく全部読んでみようと思うほど。

2008年の第1回から2016年の第9回まで、大賞受賞作の中で「面白くない」作品は一つもない思います。しかし!2017年の『響~小説家になる方法~』に関しては、「受賞は意外」とする声がチラホラと聞かれます。

たまたま筆者は受賞前から何となく気になってツタヤレンタルで読んでいましたが、まさか受賞するとは思っていませんでした。どちらかと言えば、マイナーな漫画という印象が強く…。なんせ、『響』はレンタル本もうちの近所のツタヤでは1冊ずつしか置いていないという低評価。ちなみに近所のゲオには1冊も置いていなかった…という…。

面白くない派の意見をまとめてみた


響~小説家になる方法~ 2 (出典:Amazon)

それではここからいよいよ、漫画『響~小説家になる方法~』はホントに面白くないのか、をみんなの声から検証したいと思います。ちなみに、筆者の判定は「まあ、面白い…というか、だんだん面白くなってきてる!?」です。なので、面白くない派の意見を真っ向から否定していきたいと思います!

面白くない派意見①天才っぷりが伝わってこない


響~小説家になる方法~ 3 (出典:Amazon)

今回はTwitterから意見を挙げていますが、例えばAmazonなどのレビューを読むと、けっこう辛辣な意見もあります(※2017年4月現在、1巻のレビューで63名回答の☆3.1)。マンガ大賞を獲った作品にしては、評価低すぎ…と思うのですが、その第一の理由がコレッ!

「主人公・響の天才っぷりがあまり伝わってこないけど…!?」

本作の中で主人公・響は、高校一年生でありながら芥川賞と直木賞をW受賞しちゃうぐらいの圧倒的な文才を持っている少女として描かれています。が!肝心の響が書いたとされる小説『御伽の庭』の内容が不明なまま、物語が進んでいくのです。

響の小説が漫画の中に全く登場しないため、周辺のキャラが「響ってスゴイ・天才」という評価を下す場面を読んで、「響ってすごいんだね。天才なんだね」と読者は理解するわけです。それは例えば、『のだめカンタービレ』や『ピアノの森』、『四月は君の嘘』、『BLUE GIANT』などの音楽漫画などで、音が聴こえてこないのに、まるで聴こえてくるような感覚を覚えるのと似ているでしょうか。

そのあたりの繊細な描写をしっかりと読み取れている人も多くいます。割合にすると、読み取れている人:読み取れていない人=2:1(※これも2017年4月現在のAmazonレビュー調べ)。

面白くない派意見②主人公・響の破天荒っぷりがイタイ


響~小説家になる方法~ 4 (出典:Amazon)

現在6巻まで刊行されている本作ですが、最初からブレない主人公・響の性格設定が話題です。響は、気に入らないことがあると、相手が誰であろうと暴力を振るいます。

例えば、それが校内一の不良であろうと、全くひるむことなく指をへし折ります。自分の気持ちを通すためなら、多少の危険(例えば、屋上から飛び降りること)も厭いません。そんな響の破天荒っぷりを読んで、あまりの非常識ぶりに拒否反応が出た方もいるようです。

しかし、巻数を読み進めていくと、この響の破天荒っぷりには、ある法則があることに気づかされます。響は単に自分のわがままでブチ切れているわけではないのです。その法則に気づいた読者は、響の暴力的な行動に爽快感さえ覚えるようになります!響が文学界を、そして腐った大人たちを滅多切りにしてくれることを楽しみに待つ読者も多いようです。

面白くない派意見③絵が下手すぎる…


響~小説家になる方法~ 5 (出典:Amazon)

本作を読んだことのない方でも、表紙だけでもお気づきかと思いますが、柳本光晴は絵が下手です。これは本作のことを「面白い」と思っている筆者自身も認めます!というか、柳本自身、「絵が下手だ」と公言しております。マンガ大賞受賞の折には、アシスタントが「先生、マンガは絵じゃないってことが証明されましたね!」と辛口コメントを残したという逸話も。

この件に関しては、言い訳しません。でも読んでいるうちに、だんだんと味があるように見えてくるから不思議です!

面白くない派意見④小説家になる方法が書かれていない


出典:響公式Twitter

『響』のサブタイトルは「小説家になる方法」です。このサブタイトル、主人公・響に当てはめるならば、全くそぐわない内容。このサブタイトルから主人公が努力して小説家になる方法が描かれていると勘違いしたまま読み始めた方々は、かなり違和感を覚えてしまうよう…。

このサブタイトルは、天才・響のためにあるのではなく、その周辺にいる天才にあと一歩及ばない作家たちのためにあるのではないか、と思います。この作品の見どころは、響の圧倒的な天才&奇才&狂気を楽しむことですが、実は響の脇にいる凡人たちの心情こそが読者が感情移入できるポイントなんです。

結局『響~小説家になる方法~』は面白い!

1巻・2巻…と読み進めているときは、「んん~。これは特殊な物語だな…。主人公・響の破天荒っぷりが目立って、全く感情移入できない…。響周辺の凡人たちのほうが魅力的だな~」と思っていました。

が、3巻・4巻…と読み進めていくうちに徐々に響が世の中の必要悪とされるようなものと闘っているということが分かってきて、日常の汚い現実にも目をつぶっていなければならない大人である筆者自身の鬱屈した気持ちを一掃してくれていることに気づいたのです。「そんなのキレイごと…」という方。いいじゃないですか!漫画の世界では「キレイごと」で夢を見ましょうよ!

最新刊の6巻は2017年の4月12日に発売されたばかりです。気になる方はぜひ1~6巻、イッキ読みしてみてくださいね!