新海誠監督作品『君の名は。』は、今までにないアニメーション映画として注目されました。その唯一無二ぶりは、劇中で使われる音楽にもあらわれています。本作の主題歌・劇中歌は全てRADWIMPSが担当していますが、RADの楽曲は既存の“劇中歌”という概念にとらわれない、画期的な使われ方をしているのです!
記事の目次
新海監督がRADに楽曲を依頼したタイミングが鍵!
『君の名は。』の主題歌と映画内で使われる劇中歌は全てRADWIMPSが担当しています。まずは、どういう経緯でRADが本作の劇中歌のオファーを受けるに至ったのかをまとめます。
新海監督がRADの大ファンだった!
昔から新海監督はRADのファンだったそうで、劇中歌を誰にお願いするかとなったときに監督が真っ先に名前を挙げたのがRADだったそう。監督自身もまさか実現するとは思わなかったという奇跡のコラボ!2016年秋公開の『君の名は。』ですが、2014年秋には既にRADに主題歌のオファーをかけていたそうです。
新海監督がRADを最大限に利用!?
公開2年前に主題歌を依頼とは、ちょっと早すぎるタイミング。なぜこんなに早いタイミングでの依頼になったのかというと、監督の中に、RADの歌詞を映画の中に取り入れていこうという意図があったからとのこと。
つまり、『君の名は。』の世界観は、新海監督のみが作り上げたものではなく、RADの野田洋次郎が作り上げる歌詞の世界観が多いに反映されたもの、ということなのです!
そこで今回は、RADが『君の名は。』に提供した主題歌を含む劇中歌4曲の歌詞に注目して内容を考察していきます。
劇中歌1┃主題歌『前前前世』
「君の前前前世から僕は君を探し始めたよ」という力強い歌詞が印象的な主題歌『前前前世』から考察していきます!
『前前前世』歌詞の世界観=『君の名は。』
歌詞の中には、すれ違う二人がお互いのことを探し求める姿や、「光年」「宇宙」「時」「銀河」などティアマト彗星を彷彿とさせる内容や、「君は僕から諦め方を奪い取ったの」など瀧が三葉のことをあきらめずに救出する姿とリンクするような内容があります。
もうこれは、『君の名は。』の主軸と『前前前世』の世界観がリンクしまくっています。リンクというよりイコールといったほうがいいかもしれませんね。
サントラ歌詞と映画内で流れる歌詞が違う!?
『君の名は。』にはサウンドトラックが出ています。筆者ももちろん購入済みですが、『前前前世』は映画の中で使われていた歌詞(original ver.)とこのサントラに入っている歌詞(movie ver.)とが微妙に異なります。実は映画の中で使われた方は下記の歌詞が追加されています。
【映画内の歌詞original ver.】
私たち越えれるかな この先の未来数えきれぬ困難を
言ったろう 二人なら 笑って返り討ちにきっと出来るさ
君以外の武器は他にはいらないんだ(RADWIMPS / 『前前前世 original ver.』より歌詞引用)
この歌詞、映画の中ではかなり目立つ場面で使われています。しかしサントラでは、映画内で使われていた上記の歌詞が全く存在しません。そのため、映画を観た後サントラを購入した人たちから「歌詞が違う!」と話題になりました。
もともと、この歌詞は映画に入る予定ではなく、RADが自分たちのアルバム用にと歌詞を書き足したのを新海監督が目ざとく見つけ、「ぜひ映画の中で使用したい」ということで使われることになったというのが事の顛末のようです。
つまり、2016年11月に発売されたRADのアルバム『人間開花』に収められている『前前前世original ver.』では映画内で使われていた歌詞が存在するということです!気になる方はぜひ聴いてみてください!
劇中歌2┃『夢灯篭』
ああこのまま僕たちの声が 世界の端っこまで消えることなく
届いたりしたらいいのにな
そしたらねぇ 二人で どんな言葉を放とう
消えることない約束を 二人でせーので言おう(RADWIMPS / 『夢灯篭』より歌詞引用)
上記の歌詞で始まる『夢灯篭』。
映画の中ではオープニング曲として使われており、ほぼこの曲の歌詞が物語の始まり部分を説明しています。「消えることない約束」「時間にキスを」「5次元にからかわれて」「君の名を今追いかけるよ」など、「よく聞いとけよ~」と言いたくなるような歌詞がアップテンポで畳みかけられていきます。
これから物語が始まるワクワク感をギュッと詰め込んだような楽曲が最高です!
劇中歌3┃『スパークル』
もしかしたら『前前前世』よりも人気があるかもしれない『スパークル』。『前前前世』はポップな曲調ですが、『スパークル』は繊細なピアノ旋律が美しく、バラードの曲調で、『君の名は。』の雰囲気にピッタリ合っています。
新海監督もこの楽曲がかなり気に入っているようで、やはりこれもムービーヴァージョンとオリジナルヴァージョンがあります。映画内ではなんと9分間も流れ続けるという冒険をしている曲でもあり、『スパークル』が流れる場面で号泣した人も多いはず!
「まだこの世界は僕を飼いならしてたいみたいだ 望み通りだろ?美しくもがくよ」「ついに時はきた 昨日までは序章の序章で 飛ばし読みでいいから こっからが僕だよ」「いつか消えてなくなる君の全てを この目に焼き付けておくことは もう権利なんかじゃない 義務だと思うんだ」瀧くんの心を代弁しているかのような歌詞が胸に響きます。
劇中歌4┃『なんでもないや』
感動のエンディングは、『なんでもないや』です。この楽曲も人気がある作品。三葉役を演じた上白石萌音がカヴァーしたことでも知られていますね。映画内では、彗星落下から糸守の人々が救われ、三葉や瀧はその後の人生を過ごしているという場面でこの曲が流されます。
徐々にボリュームが大きくなるような感覚があり、映画を観終わってからも「もう少しだけでいい あと少しだけでいい もう少しだけくっついていようか」というストレート、ド直球の歌詞がリフレインしているような感覚がありました。
この『なんでもないや』のストレートな歌詞は、新海監督がこの物語の終着点を決めるにあたり、大きな影響を与えています。当初からこういう終わり方にするというのは決めていたという監督ですが、『なんでもないや』の歌詞をもらってからそれが確信に変わったのだそう。
RAD×新海監督の最強タッグで生まれた『君の名は。』
RADは、単に『君の名は。』の主題歌&劇中歌を担当したわけではないということがお分かりいただけたでしょうか。
新海監督はRADの生み出す歌詞の力を強く信じており、RADに物語の世界を追体験することを求めました。その中で出てきた歌詞は、新海監督にとって信頼にたるものであり、迷いを捨てて前進する大きな力となったようです。それは、RADの歌詞の世界観が『君の名は。』を創り上げたと言っても過言ではないほど。
『君の名は。』は、2017年4月現在、まだ劇場公開されているところもあります。ぜひ劇場でこのRADの音楽を映像とともにもう一度体感してほしいと思います!