『言の葉の庭』は新海誠監督の史上最高の映像美を堪能できる傑作!





『君の名は。』大ヒットで新海監督の過去作を観直した方も多いのでは?今回は、『君の名は。』の一つ前に製作された『言の葉の庭』を特集。その魅力は、何といっても新海誠監督史上最高なのでは!?と思えるほどの美しい雨の風景!たった46分という短いこの作品にみんなが魅了される理由を探りました。

『言の葉の庭』とは?

映画『言の葉の庭』予告編映像

『言の葉の庭』は、『君の名は。』の一つ前の新海誠監督作品で、2013年5月に公開されています。公開直後は全く話題にならず、興行収入もなんとたったの1.5億ほど。当時、実際に劇場に足を運んだのは、一部のコアな新海ファンのみでしたが、『君の名は。』の大ヒットを受けて、あらためて『言の葉の庭』を観てみたいという方が急増しているようです。

たった46分という短いフィルムですが、余計な語りも無く、圧倒的な映像美が迫ってきます。映像の美しさに関しては、『君の名は。』を超えているかもしれない本作。その魅力をお伝えします。

魅力1┃圧倒的な映像美!雨の美しさに感動を覚える


出典:新海誠作品PRスタッフ公式Twitter

まずは、『言の葉の庭』の第一の魅力、映像美について。雨のシーンが多い『言の葉の庭』ですが、その映像は決して暗くありません。ずっと眺めていたい衝動に駆られるほどの映像美を語ります!

新海監督の中にある雨の風景=色鮮やかで美しい!

普通、雨のシーンというと、どうしても暗くなりがち。しかし、新海監督の中にある雨の風景は、実に色鮮やかで美しいものでした。

雨に洗われたような美しい新緑の風景や、光が差してきたときのキラメキなど、雨の風景ってこんなに美しかったんだ!と開眼させられるような衝撃的な感動を覚えます。映像美に関して言えば、『君の名は。』より上という声も多数あるようです。

緑の使い方がカギ!


劇場アニメーション『言の葉の庭』 DVD(出典:Amazon)

雨のシーンが7割か!?とも言われる『言の葉の庭』の映像がどうして美しく鮮やかに感じられるのか…と考えてみたところ、本作のDVDのパッケージを見ても分かるように、「緑」がポイントとなってくると。

この画は、新宿御苑の東屋での1シーンを切り取ったものですが、緑の分量の多さに圧倒されます。よーく見ると、なんと主人公のタカオと雪野先生の輪郭までもが薄い緑で縁取られています。東屋を支える柱も本来は薄い茶色ですが、こちらもかなり緑がかっているように見えます。

この特殊な緑の使い方によって、雨のシーンでも色鮮やかに感じられるのだと思います。雨の水滴でさえも水色ではなく緑で表現するというこだわりぶりが、独特の新海ワールド映像美を昇華させている、と言えるでしょう。

魅力2┃可愛いだけじゃない!ユキノ先生の魅力


出典:新海誠作品PRスタッフ公式Twitter

本作の主役はタカオという靴職人を目指す高校一年生の男子ですが、実はタカオ以上に話題なのがユキノ先生。この作品を10代男子が観たとすると、絶対に年上女性に興味が沸くのではないかと!ユキノ先生の魅力を徹底解剖します。

ユキノ先生の魅力1┃雨の日の公園でビール+大量チョコを食す!

主人公のタカオとユキノの出会いは、雨の新宿御苑。平日の朝から会社にも行かず、ユキノはビール片手にチョコレートを食べるという、奇怪な食志向を示します。

このビールにチョコという組み合わせが、ユキノの精神状態の不安定さを物語っています。純真無垢な10代のタカオにとって、その食志向はおそらく謎めいており、ユキノが抱えるものの大きさを感じ取るに十分だったはず。

また、ユキノの弱さもタカオにとって、魅力以外の何ものでもなかったと。年上の女性だけれども、守ってあげたいという気持ちになったとしても不思議ではありませんね。

ユキノ先生の魅力2┃短歌で恋心を詠っちゃう!

初対面のユキノとタカオ。去り際、ユキノはタカオに対し「雷神(なるかみ)の 少し響みて さし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ」という短歌を言い残します。短歌を投げかけられたタカオは、当初は意味が分からず悶々としますが、やがてその意味に気づきます。

意味=「雷が鳴り響いて曇って雨が降ったら、あなたをとどめておけるのに」

そして、タカオの返歌=「鳴神の光りとよみて降らずとも、我は止らむ。妹し止めてば」意味=「雷が鳴って雨が降らなくても、私はとどまります。あなたさえ引き留めてくれるのなら」

直接言わないこの感じ!意味が分かれば、奥ゆかしさを感じるどころが、逆にかなり激しい感情を読み取れますよね。大人しそうな外見のユキノですが、内面には激しく熱いものを持っていると考えてよいでしょう。

ユキノ先生の魅力3┃足の採寸シーンがエロい!

靴職人を目指すタカオがユキノ先生の足の型をとるシーン。ここがめっちゃエロいと話題です。それは、露骨な性描写シーンがある実写映画なんかよりもずっと!

シーンの解説をすると、タカオが靴を作る練習をしているけれどうまくいかないと愚痴をこぼしたところに、ユキノがおもむろに素足になってタカオに足の採寸をさせるというだけなんですが…。おそらく、10代男子がこれを見ちゃうと、かなりゾゾゾっとくるかと!というか、老若男女問わず、ゾゾゾっとくるかと!

このシーンばかりは、実際に観て感じてくださいとしか表現しようがないんですが…。本作の見どころの一つです!

ユキノ先生の魅力4┃アラサー女子あるある

本作のもう一人の主役であるユキノ先生の心理描写を濃くするため、新海監督はアラサー女子のあるあるをけっこう盛り込んでいます。例えば、朝、メイクをしようとファンデーションを開けたとき、割れてしまっていてため息をつくシーン。悩みが深く精神的に追い詰められている心理をこのシーン一つとっても感じ取ることができます。

そんな悩み多きユキノが、タカオと出会うことで、自分の足で歩けるよう一歩踏み出すという流れは、アラサー女子の共感を数多く得ました。最後への盛り上がりは、涙なしでは観られないはず!

ユキノ先生の魅力5┃声=花澤香菜がハマり過ぎて怖い!

主人公タカオの声は入野自由で当初から決定していたそうですが、ユキノの声優を誰にするかがなかなか決まらなかったそうです。結果、選ばれたのは当時23歳だった花澤香菜。

新海監督によると花澤の「分からない」部分が良かったそう。このユキノというキャラを花澤とともに作り上げていきたいということだったらしいです。

どことなく浮世離れしたようなフワフワとした浮遊感のあるユキノの存在は、花澤の声でしか体現できなかったかも。

魅力3┃終盤の秦基博の『rain』がイイ!


言ノ葉(出典:Amazon)

新海監督作品は、音楽と映像の融合が素晴らしいということも評価が高いポイントです。本作でもやはり、音楽が素晴らしく、最後の盛り上がりにかけての秦基博の大江千里カバー曲『rain』は特に神曲と絶賛されています。

『言の葉の庭』は大人の成長物語


出典:新海誠作品PRスタッフ公式Twitter

『言の葉の庭』は大人の成長物語—そんな風に簡単にまとめてしまっていいのか分かりませんが、本作の中で際立っているのは、やはりアラサー女子への応援歌だと思うのです。もともとは雨をモチーフに美しい文学的な物語をということだったのかもしれませんが、この46分の中におさまっているのは、アラサー女子・ユキノへの監督からの精一杯の声援だと。

大人になれば迷いもなく、自分の道をひたすら究めるだけ…と、10代のころはそんな20代を理想としていたかもしれません。しかし、現実は壁だらけ!自分がそんなつもりはなくても、なぜか敵は周りにうじゃうじゃ…。結局、今やっていることが本当に自分がやりたいことかどうかも分からなくなった…どうすれば軽やかに生きていけるのか…そう悩むアラサー女子は多いはず。

物語の中でユキノは懸命にもがきます。それでも風景は美しいのです。この美しさこそが、迷える私たちへの最大のプレゼントではないでしょうか。

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2017-02-25

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