散りばめられた謎を整理!映画『マルホランド・ドライブ』の伏線考察





つまり、このカミーラ殺害を依頼するウィンキーズの場面がダイアンにとって非常に重要な瞬間だったことを示しています。映画の序盤、殺し屋が「世界の全てを網羅した電話帳」を持っている男を殺害するシーンがありましたが、この殺害は関係のない人物も巻き込んでしまう、あまりにもお粗末なものでした。これも、ダイアンが本心ではカミーラ殺害が上手くいかないことを願っていたためです。

現実のウィンキーズで、入口近くのレジに立っていた男もダイアンと目があったために夢のシーンに登場します。レジの男は前半の夢のシーンでは、「怖い夢を見た」「あなたはとても怯えていた」「全てはこの店の裏の男のせいだ」と言います。レジの男の言葉は全て、この映画の前半部分のこととダイアンのことを示しています。

レジの男がその存在に怯えており、何の説明もなく登場する「ウィンキーズ裏の男」はダイアン本人だと言うことができます。レジの男の言葉や、映画のラストにスポットライトを浴びるダイアンの顔と「裏の男」の顔が重なる点からもその様に推測できます。

老夫婦

映画のオープニング、スポットライトを浴びるベティに謎の老夫婦が寄り添っています。続いて映画の序盤、ベティがハリウッドに着いたときにも何故か一緒に同一の老夫婦が付き添っています。会話からベティとは飛行機内で出会ったことが推測できるのですが、この老夫婦は終盤、ダイアンが発狂して自殺へと向かう場面でも幻覚として登場します。

お爺さんの方はメガネをかけており、お婆さんの方は笑顔になった時の頬の膨らみが印象的です。この老夫婦は映画の序盤でベティを見送った後、リムジンの中で不気味な笑顔を浮かべます。この2人の笑顔と現実のストーリーで一致するものは、ダイアンの目の前で婚約を発表したカミーラとアダムの笑顔であるため、この老夫婦はカミーラとアダムと言うことが出来ます。彼らは、「初めからカミーラはダイアンのことを心の中では嘲笑していたのでは」というダイアンの疑心が生んだ存在なのです。

「クラブ・シレンシオ」

映画の中盤、2人が劇場「クラブ・シレンシオ」に行くことで、この夢は終わります。その劇場の催しで「ミュート付きトロンボーン」が演奏されますが、これは「皆さん観客が、実際に存在していると思っているものは全て幻である」ということを意味しています。これは前半の夢のストーリーのこととも言えますし、ダイアンとカミーラの関係とも言えます。ハリウッドの実態を描いているという点から見ると、「映画」そのものもある種の幻だと言っているとも捉えられます。

その後、2人は「泣き女の歌」を聴きます。この歌の歌詞は、愛する人に捨てられた女の心情を歌ったものですが、これはダイアンの心情そのものです。この曲を聴いて2人は涙を流し、自然と寄り添い合ったところで、「青い箱」と「青い鍵」がピッタリ合い、真実が明らかになります。つまり、カミーラもダイアンの心情を分かり、再び2人は理解し合えたときに、夢のストーリーは終わるのです。

「シレンシオ」とは「お静かに」という意味の他に「黙祷」という意味もあります。つまり、前半の夢のストーリーはダイアンとカミーラの死後、黄泉の世界での話とも言えます。映画のラストも「シレンシオ」という台詞で終わります。2人の魂、そしてダイアンのカミーラへの想いと散り去った夢、これらへの弔いでこの映画は終わるのです。

再度見直すと色々と見えてくる

一度鑑賞しただけでは今作の全貌を把握することはまず不可能ですので、ぜひ2、3回と観ることをおすすめします。今回触れた要素以外にも、夢に出てくる人や物の一つ一つが現実のストーリーでしっかりと意味を持つので、きっと初見時の印象とは全く違う映画体験が経験できることでしょう。

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2017-03-21